分化全能性(Totipotency)
一個体を形成するすべての細胞種へと分化可能な能力を指します。
受精卵(および数回の卵分割後まで)だけが持つ、
細胞系列の頂点に立つ分化能力です。
分化万能性(Pluripotency)
一個体を形成するすべての細胞種へと分化可能な能力を指します。
狭義には個体形成ではなく、
三胚葉(
内胚葉、中胚葉、外胚葉)に属する細胞系列すべてへ分化し得る能力を指す場合もあります。
胚盤胞期の内部細胞塊や、そこから樹立されたES細胞などが持つ分化能力です。
外胚葉は皮膚の表皮や男性の尿道末端部の上皮、毛髪・爪・皮膚腺(含む乳腺・汗腺)、感覚器(口腔・咽頭・鼻・直腸の末端部の上皮を含む、唾液腺)水晶体などを形成します。
外胚葉の一部は発生過程で溝状に陥入して神経管を形成し、脳や脊髄などの中枢神経系のニューロンやメラノサイトなどの元にもなります。
また末梢神経系も形成します。
内胚葉は、はじめ扁平な細胞からなり、しだいに柱状構造を造ります。
これが食道から大腸までの消化管(口腔・咽頭や直腸の末端部を除く)となります。
また内胚葉は消化管のほか肺、甲状腺、膵臓、肝臓などの器官の組織、消化管に開口する分泌腺の細胞、腹膜、胸膜、喉頭、耳管や気管・気管支、尿路(膀胱、尿道の大部分、尿管の一部)などを形成します。
中胚葉は外胚葉と内胚葉の間の、胞胚腔の中に形成されるが、その起源は動物群によって異なります。
中胚葉が進化したことにより、複雑な器官が発達し、体腔も成立しました。
体腔内に形成された器官は体壁と独立に発達することができる一方、体液により保護されることとなりました。
中胚葉は体腔およびそれを裏打ちする中皮、筋肉、骨格、皮膚真皮、結合組織、心臓・血管(血管内皮も含む)、血液(血液細胞も含む)、リンパ管や脾臓、腎臓および尿管、性腺(精巣、子宮、性腺上皮)となりました。
分化多能性(Multipotency)
分化可能な細胞系列が限定されているが、多様な細胞種へ分化可能な能力を指します。
神経幹細胞・ 造血幹細胞・
間葉系幹細胞・ 肝幹細胞・ 膵幹細胞・ 皮膚幹細胞、一般的に
胚葉を超えた分化は行えませんが、例外もあります。
組織幹細胞、
成体幹細胞などが持つ分化能力です。
分化単能性(Unipotency)
分化可能な細胞種が一種類に限定されている分化能力を指します。
前駆細胞と呼ばれることもあります。
幹細胞として分裂増殖するか、分化して別の(幹細胞以外の)細胞種に変化することができます。
筋幹細胞・ 生殖幹細胞