マクロファージは免疫系の一部を担い免疫機能の中心的役割を担っている
骨髄で産出され、末梢血の白血球のうち3~6%を占める
白血球細胞の中で最も大きく(20~30μm)、切れ込みの入った
核を持つことが多い。
単球は、
感染に対する免疫の開始に重要であり、
アメーバ様運動を行って移動することができ、細菌などの異物を細胞内に取り込み、細胞内酵素を使って消化します。
断片化した異物を、もともと細胞質内に持っていた
クラスⅡMHC分子と結合させ、細胞表面に提示し、これを
ヘルパーT細胞が認識します。
こうして
免疫反応が開始されます。
また
単球は血管外の組織や体腔に遊走し、そこで組織固有のマクロファージ(大食細胞)か樹状細胞に分化します。
あるいは、単球とは血管内に存在しているマクロファージと考えることもできます。
マクロファージの働き
生体内をアメーバ様運動する遊走性の食細胞で、死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの異物を捕食して消化し、
清掃屋の役割を果たします。
マクロファージは血液中の白血球の5%を占める単球(単核白血球)から分化します。
造血幹細胞から分化した単球は骨髄で成熟し、血流に入ると炎症の化学仲介に関わります。
単球は約2日間血中に滞在した後、血管壁を通り抜けて組織内に入りマクロファージになります。
組織に入ると、マクロファージは細胞内にリソソームを初めとした顆粒を増やし、消化酵素を蓄積します。
マクロファージは分裂によっても増殖することができ、寿命は数ヶ月です。
進化上ではかなり早い段階から存在し、脊椎動物・無脊椎動物を問わずほぼ全ての動物に存在しています。
B細胞等他の白血球はマクロファージから進化しており、血管や心臓を構成する細胞とも起源は同じです。
マクロファージが細菌、ウイルス、死んだ細胞等の異物を取り込むことを食作用と呼び、これがマクロファージの主要な機能です。
この食作用の主な役割は病原体への対処と、細胞死の残骸の処理です。
炎症の初期は好中球が担いますが、後期になるとマクロファージが集まり死んだ細胞や細菌を食作用により処理します。
マクロファージが貪食した異物は小胞(食胞、Phagosome)の形で取り込まれます。
細胞内で小胞はリソソームと融合し、リソソーム中に存在する様々な加水分解酵素の作用により分解されます。
マクロファージは抗原を摂取すると、各種のサイトカインを放出し、特定のT細胞を活性化させます。
マクロファージは、食作用によって取り込み、分解した異物をいくつかの断片にし、
もともと細胞内に持っていたMHCクラスⅡ分子(MHC-Ⅱ)と結合させ、細胞表面に表出させる。
これをマクロファージによる抗原提示と呼びます。
マクロファージによる抗原提示のシグナルは、T細胞のなかでも
ヘルパーT細胞と呼ばれる
リンパ球に伝達されます。
ヘルパーT細胞の表面には、
CD4というヘルパーT細胞特有の表面タンパク質と、
T細胞受容体(TCR, T-cell receptor)と呼ばれる受容体タンパク質が存在しており、それぞれがマクロファージのMHC-Ⅱと、マクロファージによって提示された抗原と結合することによって、ヘルパーT細胞が活性化されます。
T細胞受容体の構造は、そのヘルパーT細胞ごとに異なっており、マクロファージによって提示された抗原断片とぴったり合う受容体を持つヘルパーT細胞だけが活性化されます。
活性化したヘルパーT細胞は、インターロイキンやリンフォカイン等のサイトカインを生産することでマクロファージを活性化するとともに、
自分が認識するものと同じ抗原を認識するB細胞を活性化させます。
活性化したB細胞は形質細胞に分化して増殖し、抗原に対応する抗体を作成し、放出します。
抗体は抗原に特異的に結合し抗体-抗原複合体を作ります。
マクロファージはこの抗体-抗原複合体に引きつけられ、そしてこの複合体を貪食します。
抗体の結合した細菌やウイルスはマクロファージにとって非常に能率よく食すことができるものとなり、この際
T細胞はリンフォカインを放出するなどしてマクロファージを活性化したり、B細胞の増殖、分化を助けます。
マクロファージはT細胞の生産するサイトカインを受け取ることにより活性化
がんに対する活性マクロファージの働きが最近の研究で明らかになりました。
独立行政法人 理化学研究所が発表
米国の科学雑誌『Immunity』(2011年1月27日号)に掲載されました。
要旨
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、
がんの死細胞を貪食し、免疫を活性化する新しいマクロファージを発見しました。
これは、理研免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)自然免疫研究チームの田中正人チームリーダー、浅野謙一研究員らによる研究成果です。
がん細胞は、体の免疫監視をかいくぐり、免疫系の攻撃を受けずに増殖していきます。
しかし、放射線照射などによってがん細胞を殺すと、死んだがん細胞を免疫系が認識し、がんに対する免疫が活性化する場合があることが知られ、この現象を利用した治療法が応用されつつあります。
これまで、このがん免疫を誘導する具体的なメカニズムは不明のままでした。
食細胞ががんの死細胞を認識して取り込む方法には、2つの可能性があると考えました。
1つ目は、
がん細胞が殺されると、食細胞がその場でがんの死細胞を認識して食べ、リンパ節へ持って行く方法です。
この場合、
樹状細胞という移動性の食細胞が関わっていると考えられます。
樹状細胞は、体に侵入した異物を常に監視し、
異物を察知すると食べて取り込み、リンパ節へ移動して免疫応答を誘導する免疫監視の中心的な役割を担う細胞です。
2つ目は、
死んだ細胞がリンパ節へ流れていって、リンパ節にいる食細胞が認識し取り込む方法です。
この場合、
マクロファージという貪食細胞が関わっている可能性があります。
マクロファージは、死んだ細胞を食べて処理する免疫細胞です。
これまでの研究で、このマクロファージの役割は、体に侵入した異物や自己の死細胞のごみ掃除だけと思われていましたが、最近、
いろいろな種類のマクロファージが、多種多様な免疫反応を制御していることが分かってきました。
研究チームは、マウスを用いた実験で、
がんの死細胞を食べると、がん免疫を活性化するマクロファージの一種(CD169陽性マクロファージ)を発見しました。
このマクロファージは、リンパ節の入り口で待ち構え、リンパ流に乗ってやってきたがんの死細胞を食べてしまう、門番のような働きをします。さらに、この門番のようなマクロファージの一部(CD169陽性CD11c陽性マクロファージ)は、
がん細胞を直接攻撃するキラー細胞(細胞傷害性T細胞)に食べたがん細胞の情報を伝え、がん細胞を殺すよう指令を出す、重要な役割を持つことが分かりました。
今後、このマクロファージを効率的に活性化することによって、がん免疫を誘導する新たな治療につながる可能性があります。
今後の期待、これまで死んだ細胞を掃除するごみ処理係ととらえられていたマクロファージですが、近年、マクロファージにはいろいろな種類があり、多種多様な免疫反応を制御することが分かってきています。
今回研究チームは、
リンパ洞という、リンパ節の特殊な部位に存在するわずかなマクロファージが、意外にも、がん免疫に重要な役割を果たすことを明らかにしました。
これまで、がん免疫には樹状細胞が重要ではないかと推測されてきましたが、今回の実験で、がんの死細胞の断片は、数日かかってリンパ節へ移動してくる樹状細胞よりずっと早く、接種後3時間程度で近くのリンパ節にとどまり始めました。
さらに、リンパ節に存在する樹状細胞を解析したところ、
がんの死細胞を貪食している樹状細胞は5%程度と非常に少ないことが分かりました。
以上の結果から、
樹状細胞はがん免疫にあまり関わっていないことが分かりました。
がんの死細胞を貪食してがん免疫を誘導する、新たなマクロファージを発見した今回の成果は、がん免疫のメカニズムを明らかにする上で非常に重要です。
今後、この
マクロファージを効率的に活性化することによって、がん免疫を誘導する新たな治療につながると期待できます。
樹状細胞
抗原提示細胞として機能する免疫細胞の一種です。
抗原提示細胞とは自分が取り込んだ抗原を、他の免疫系の細胞に伝える役割を持っています。
皮膚組織をはじめとして、外界に触れる鼻腔や肺、胃、腸管に存在し、その名のとおり周囲に突起を伸ばしています。
表皮の樹状細胞はランゲルハンス細胞と呼ばれます。
抗原を取り込むと樹状細胞は活性化され、脾臓などのリンパ器官に移動し、リンパ器官では取り込んだ抗原に特異的なT細胞やB細胞を活性化します。
樹状細胞は発現している表面抗原分子 (CD, cluster of differentiation) によってさまざまなサブセットに分類されます。
T-細胞関連樹状細胞: | 骨髄系樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、ランゲルハンス細胞、指状(ゆびじょう) 嵌入(かんにゅう)細胞、ヴェ-ル細胞、真皮内樹状細胞
|
B-細胞関連樹状細胞: | 胚中心樹状細胞、抗原担送細胞 |
樹状細胞の寿命は、数日~数箇月、ときには数年です。
肥満細胞
哺乳類の
粘膜下組織や結合組織などに存在する造血幹細胞由来の細胞
ランゲルハンス細胞(樹状細胞)とともに炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ。
肥満細胞という名前ではあるが肥満とは関係が無く、膨れた様が肥満を想起させることからついた名前である。
また、
顆粒細胞(mast cell/マスト細胞)とも呼ばれる。
ヒトの肥満細胞にはいくつかの異なるタイプがあるとされ、たとえば社会問題となっている花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎の発症部位である鼻粘膜においては、
粘膜型と統合織型の肥満細胞があるとされる。
これらのうちその
発症に関わるものは粘膜型である。
肥満細胞は
IgEを介した
I型アレルギー反応の主体である。
肥満細胞の中にはヒスタミンをはじめとした各種化学伝達物質(ケミカルメディエーター)があり、細胞表面に結合したIgEに抗原が結合しその架橋が成立すると、それが引き金となって細胞膜酵素の活性化がうながされ、結果的に内容物である特異顆粒、すなわちヒスタミンなどが放出される(脱顆粒)。
また、細胞膜酵素の活性化は、アラキドン酸の生成と代謝を亢進させ(アラキドン酸カスケード)、代謝物であるロイコトリエン、血小板活性化因子(PAF)、プロスタグランジン、トロンボキサンA2などを細胞膜から遊離する。
こうした肥満細胞から遊離されたケミカルメディエーターのうち、ヒスタミンやロイコトリエンC4などは気管支平滑筋収縮作用、血管透過性亢進作用、粘液分泌作用などを有し、
アレルギーにおける即時型反応を引き起こす。
いっぽう、血小板活性化因子やロイコトリエンB4などは遊走因子として好酸球や好中球などの炎症細胞を反応局所に呼び寄せる。
これは
アレルギーの遅延層反応(アレルギー性炎症)を引き起こす。
また、肥満細胞は樹状細胞の移動に関与することも報告されている。