リンパ系とは
リンパ液を運搬する導管ネットワークで、リンパ液が通過するリンパ組織もこれに含まれます。
リンパ節を筆頭としてリンパ組織が見出される器官は多く、扁桃腺のように消化管に付随したリンパ濾胞(ろほう)もその一つです。
リンパ系は、リンパ器官(リンパ節、リンパ管、胸管など)からなる複雑なシステムで、リンパ液の生成及び、組織から循環系への移動にあずかり、また免疫系において大きな役割をはたします。
リンパ系の役割
1.組織から余剰になった液を取り除く
2.消化吸収された脂肪酸と脂質を循環系まで運ぶ
3.免疫担当細胞(リンパ球、単球、抗体を産生する形質細胞)の産生
リンパ系に病気や何らかの異常が起きると、腫脹や他の症状が現れます。
リンパ系の異常は体の感染症への抵抗力を損ないます。
リンパ液
リンパ液の元は毛細血管から滲出(しんしゅつ)した血漿成分が細胞間隙の組織液となったものです。
細胞間質液もしくは間質リンパと呼ばれます。
間質リンパは毛細血管から栄養と酸素を細胞に運び老廃物を血管やリンパ管に運ぶ細胞間の体液ネットワークです。
血漿は毛細血管動脈圧によって毛細血管から押し出され、細胞間質液(間質リンパ)となり、ほとんど(80?90%程度)の血液ガス電解質を含む水分は膠質(こうしつ)浸透圧によって血管内に戻ります。
全体のボリュームの(10?20%程度)のタンパク質や老廃物などを含んだ間質リンパは、リンパ管に流れ込み管内リンパとなり、リンパ系によって循環系に戻されることになる。
要するに、リンパ管内のリンパ液(管内リンパ)はリンパ系にとりこまれた組織液そのものです。
細胞間を流れる「間質リンパ」とリンパ管内をながれる「管内リンパ」は濃度差などがあるが同じものです。
様々な器官のリンパ排液についての研究はがんの診断と治療の点から重要です。
リンパ系は体内の多くの組織に物理的に近いところに位置しているため、体内の様々な部位の間で転移と呼ばれるプロセスを起こしてがん細胞を運んでしまいます。
がん細胞はリンパ節を通過するからそこで捕らえることができます。
もしそこでがん細胞を破壊できないなら今度はリンパ節が2次性腫瘍の病巣となる恐れがあります。
リンパ系は第二の循環系として機能しています
リンパ系では
リンパ節の白血球が体を癌細胞、真菌、細菌、ウイルスから守っています。
ポンプ(心臓)を中心とした閉じた管からできている血管系と違って、リンパ系は開放循環系です。
リンパ系の圧力は低く、液の流速も遅い。
リンパ系の圧力は
蠕動、骨格筋の収縮によってもたらされ、
リンパ管には静脈と同じく、逆流防止の半月弁があります。
リンパ液の移動は主に骨格筋の収縮を原動力としますが、周期的な管壁の収縮もリンパ液のリンパ管への移動を助けます。
毛細リンパ管は集合しつつ次第に太くなり、右の上半身からのリンパ液は右リンパ管に、他の部位からのリンパ液は胸管に集まります。
これらは右及び左の鎖骨下静脈に流れ込み、血液循環系と合流します。
リンパ管は 乳糜(管とも呼ばれ、消化管の表面に沿って分布します。
小腸で吸収された栄養素はほとんどが肝門脈を通って肝臓に流れ込みそこで処理されますが、脂質はリンパ液に乗って胸管を通り静脈まで運ばれます。
小腸からの脂質を多く含むリンパ液は乳糜と呼ばれ、脂質は一旦体循環に乗った後で肝臓において処理されます。
リンパ球は、造血幹細胞から増殖・分化していきます
血液中(末梢血中)にある血球の量(容積比)は40~45%ですが、その99%以上は、赤血球です。
その残りが血小板と白血球(リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球)ということになります。
血液1mm3中の白血球の数は3,500~9,000個であり、これは状況に応じて増減します。
白血球中に占めるリンパ球の割合は30~50%ほどであり、これも状況に応じて変化し、健康・
自分の体を攻撃してくる癌細胞、細菌などの微生物、ウイルス、あるいはアレルゲンなど、いわゆる異物の種類や量に応じて、
体はそれらを最も防御しやすいようにリンパ球と顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)の比率を変化させます。
リンパ球は、リンパ器官に多量に存在する
リンパ器官とは、リンパ球の増殖、分化、および機能発現の場となる器官を言います。
このうち、リンパ球の
増殖および分化の場であって抗体産生などの機能発現を行わないものは
一次リンパ器官と呼ばれ、
骨髄や胸腺が相当します。
一方、
抗原依存性の増殖と抗体産生および免疫反応を行う器官は、二次(末梢性)リンパ器官と呼ばれ、リンパ節、脾臓、扁桃(舌扁桃、口蓋扁桃、耳管扁桃、咽頭扁桃)、パイエル板(腸管リンパ節)、虫垂などが相当します。
リンパ球の概略
リンパ球(Lymphocyte)は、比較的小さく、直径8~12μmの球形の細胞です。
大型の丸い核をもち、それに対して細胞質は少なく、
抗体(免疫グロブリン)を産生し、自ら様々な化学物質を出すことによって標的細胞や異物を攻撃しますが、特にウイルスなどの小さな異物や腫瘍細胞に対してはこれらのリンパ球が中心となって対応します。
種類としては、
B細胞(Bリンパ球)、Tリンパ細胞(Tリンパ球)、NK細胞などに分けられますが、その外部形状から区別することは困難です。
末梢血中のリンパ球におけるそれぞれの存在割合は、B細胞20~30%、T細胞が70~80%を占めています。
Bリンパ球は、骨髄で未熟Bリンパ球に、脾臓で成熟Bリンパ球になります。
Bリンパ球は、骨髄中において、造血幹細胞 → リンパ系幹細胞 → プロBリンパ球 → 大型プレBリンパ球 → 小型プレBリンパ球 → 未熟Bリンパ球 へと分化します。
未熟Bリンパ球は血流に乗って脾臓に到達し、そこで成熟Bリンパ球になります。
細胞表面には、抗原を認識するためのレセプターとして細胞膜結合形のIgMやIgD装備します。
このようにしてできあがった成熟Bリンパ球は、血流に乗って二次リンパ器官に到達し、そこで抗原に対する反応に備えます。
一部のBリンパ球は、消化管上皮、粘膜組織など、外来抗原との接触頻度の高い組織にも定着します。
Bリンパ球は形質細胞に変化すると、抗体を産生します
病原体などが体内に侵入した場合、それをマクロファージなどが貪食し、抗原(敵であることを識別できる部分)を細胞表面に提示すると、それに接触したBリンパ球のうち適合するレセプターを持った
Bリンパ球が活性、形質細胞(プラズマ細胞、plasma cell)へと分化します。
また、
マクロファージなどの抗原提示をヘルパーTリンパ球(ヘルパーT細胞)が受け取ると、ヘルパーTリンパ球は、Bリンパ球(B細胞)を刺激するリンフォカイン(リンパ由来のサイトカイン)という物質を分泌します。
リンフォカインとはリンパ球が分泌する生理機能を持ったタンパク質(サイトカイン)の総称です。
リンフォカインによって
Bリンパ球が活性化されると、その後に同じタイプのものが大量に産生され(クローンの拡大)、それぞれは形質細胞にまで分化し、多量の抗体(1細胞あたり1,000万分子以上)を産生して放出します。
抗体は血清中にあるから液性免疫という
形質細胞は抗体(免疫グロブリン)を産生するだけの専門性の高い、極度に分化した細胞であり、核は少し小さく歪な形になり、そのぶん細胞質が少し多く見えます。
形質細胞は細胞ごとに産生する抗体の種類が決まっており、単一の抗原特異性を示します。
形質細胞が放出した抗体は血清中にあり、血液や組織液によって運ばれるため、
抗体による免疫メカニズムは液性免疫とも呼ばれます。
抗体とは、特定の分子にとりつく(
抗原抗体反応)機能を持った分子であり、その働きによって病原体を含む抗原抗体成分は凝集します。
また、血液中に存在する
補体(
免疫反応を媒介する血中タンパク質の一群で、多くの種類があります)を結合させることによって、
オプソニン化(
食細胞に貪食されやすくなる)、細菌の殺傷(細菌外膜に穴を開ける)、マクロファージ等の
化学遊走の誘起などを起します。
いったん抗体が産生されると、その情報はメモリーBリンパ球に記憶され、次に同じ抗原が侵入すると、すみやかに、それに対応した抗体の産生が開始されます。
抗体には、次のような種類がある
IgG
・ヒト免疫グロブリンの70~75%を占め、
血漿中に最も多い抗体であり、血液、0組織液に広く存在する。
・
ウイルス、細菌、真菌など様々な種類の病原体と結合し、血液中に存在する補体を結合させることによって、オプソニン化、細菌の殺傷、マクロファージ等の
化学遊走の誘起を起こす。
・また、ヒトの胎盤を通過できる唯一の抗体であり、免疫系が確立される生後1週間ぐらいまでの胎児を守る。
IgA
・ヒト免疫グロブリンの10~15%を占め、血中に2番目に多い抗体である。
・血液の他にも、
鼻汁、唾液、母乳、腸液などの外分泌液に含まれており、粘膜面への微生物の侵入を防いでいる。
IgM
・ヒト免疫グロブリンの約10%を占める。
・通常は血液中のみに存在し、感染微生物に対して最初に産生される。
・5量体で存在することが多く、補体を結合させる活性も高い。
・赤血球のABO式血液型におけるA抗原やB抗原に対する主な抗体である。
・20週目ほどの胎児が最初に発現する抗体でもある。
IgD
・ヒト免疫グロブリンの1%以下である。
・Bリンパ球表面に存在し、抗原認識、そして抗体産生の誘導に関与する。
・形質細胞になると失われる。
IgE
・ヒト免疫グロブリンの0.001%以下と極微量しか存在しないが、
アレルギー患者では増加する。
・寄生虫に対する免疫反応や、アレルギー、気管支喘息に大きく関与している。
・マスト細胞(肥満細胞)や好塩基球の表面受容体に結合し、そこに更に抗原タンパク質が結合すると、細胞内顆粒中に貯蔵されているヒスタミンなど放出する。
単球(Monocyte)は組織内に移るとマクロファージになる
Tリンパ球の種類とその役割