増殖促進シグナルが無い時は細胞周期のG0期へ、増殖シグナルが入るとG0期からG1期に戻る。
正常な細胞の増殖
(1)細胞外からの増殖シグナルである増殖活性因子が細胞膜の受容体に結合することから始まる。
(2)その受容体のチロシンのリン酸化活性が高まり、そこから細胞内のリン酸化カスケードを発動し、シグナル伝達に関係するタンパク質がつぎつぎにリン酸化していく。
(3)リン酸化カスケードの次に Rasが活性化される。
活性化したRasはGTPと結合して活性型となり、細胞増殖のシグナル伝達因子として機能します。
(4)続いて、MAPKカスケードが働き、最終的にシグナルが核内へと伝達され、転写因子が活性化され、細胞増殖、細胞分化の遺伝子が発現する。(ERK-MAPK 経路)
これが増殖因子受容体からの細胞内シグナル伝達です。
Rasの下流で3種類のキナーゼ(MAPKKK→MAPKK→MAPK)がリン酸化により順次活性化する経路をMAPKカスケードという。
※ MAPK : 蛋白質中のセリン/スレオニンをリン酸化する活性を持つ酵素
※ MAPKK : MAPKをリン酸化する酵素
※ MAPKKK : MAPKKをリン酸化する酵素
1.MAPKKKの一つであるRaf-1は活性化されたRasに結合して活性化され、MAPKKであるMEKをリン酸化して活性化する。
2.活性化したMEKはMAPK(ERK)を活性化する。
3.核内に移送されたERKは種々の転写因子のセリン・スレオニン残基をリン酸化して細胞増殖・分化の遺伝子発現を促進する。
アポトーシス誘導の抑制
(1)受容体のチロシンがリン酸化し、受容体の活性化に伴って、受容体自身、あるいはアダプター分子がリン酸化されると、そこに PI3Kが調節サブユニットp85のSH2ドメインを介して結合し、活性化する。
(PI3Kは調節サブユニットp85と触媒サブユニットp110で構成されるヘテロ2量体の酵素です。)
(2)活性化したPI3Kは、PIP2にリン酸基を供与し、PIP3を産生する。
PIP2: 細胞膜を構成するリン脂質
PIP3: PHドメインをもつ蛋白質と結合する
(3)PIP3はセカンドメッセンジャーとして働き、PDK1やAktを細胞膜近傍に誘導し、PDK1によるAktのリン酸化が起こる。
PDK1: PIP3に依存的な蛋白質リン酸化酵素PDKのファミリー
(4)活性化Aktは、アポトーシス促進因子のBADの不活化、グリコーゲンや脂肪酸合成を促進するGSK3βの活性化、蛋白質合成促進に関係するmTORの活性化などに働き、また細胞周期促進への関与や、細胞が生存・成長しやすい環境に整えたりする。
親水性シグナル分子の細胞内へのシグナル伝達
がん(癌)細胞の増殖シグナル伝達