上皮組織
上皮組織の細胞は、上皮細胞と言い、多くのがん(癌の85%以上)は上皮より発癌します。
体表面を覆う「表皮」、管腔臓器(臓器)の粘膜を構成する「上皮(狭義)」、外分泌腺を構成する「
腺房細胞」や内分泌腺を構成する「
腺細胞」などを総称した細胞です。
これら以外にも
肝細胞や尿細管上皮など分泌や吸収機能を担う実質臓器の細胞も上皮に含められます。
上皮にできる悪性腫瘍の多くを『癌』と呼び、結合組織、筋肉組織、神経組織にできるがんを『○○腫、白血病』と言います。
上皮間葉転換(EMT)は、癌幹細胞や癌の転移、浸潤と深くかかわっています
上皮細胞が,間葉細胞様に形質を変化させることによって、癌細胞の浸潤や転移を可能にするだけでなく、癌幹細胞発生を促(うなが)すとされています。
EMTには ①がん発生の過程 ②がん化過程 ③そして炎症に伴う上皮細胞の間葉系細胞への変換、すなわちⅠ型コラーゲン産生性線維芽細胞・筋線維芽細胞への移行という3種類が存在するとされています。
上皮間葉転換・EMT(epithelial mesenchymal transition)
とは
主にからだの表面(皮膚や内臓の表面など)を構成する上皮細胞と骨・筋肉や血液などを構成する間葉細胞があります。
上皮細胞は、整然と配列され、互いに密な連結を有する(
Eカドヘリン・細胞接着をつかさどる糖タンパク)のに対し、間葉細胞は、細胞外基質の中で、周囲との結合にしばられずに存在しており、運動能を有するのが特徴です。
そして、興味深いことに、間葉細胞の素は、胎生期の初期段階で、上皮細胞から「のれん分け」されるように作られます。
このように、上皮の性質を失って、間葉としての性質を新たに得る変遷(transit)のメカニズムを、
上皮間葉転換(EMT)とよびます。
上皮間葉転換(EMT)癌転移のプロセス
上皮の悪性腫瘍である癌は、局所の制御不能な細胞増殖にはじまり、やがて腫瘍細胞が周囲の構造を壊しながら、血管やリンパ管に侵入し、血液やリンパの還流に乗って他部位に到着、その後、血管・リンパ管外に出て組織に定住することで、遠隔臓器に転移します(図1)。
その過程において、腫瘍細胞が自身の上皮としての性格を失い、運動能力を得るとともに浸潤に有利な特性を有するように、細胞の性質が変化していることがわかりました。
つまり、腫瘍細胞は、胎生期のEMTと同様のメカニズムにより間質細胞としての特性を得て、基底膜や管腔の内皮といったバリアをかいくぐりながら、他臓器を侵略していくのです。
さらに、腫瘍細胞のEMTにおいては、細胞形態の変化や運動能の獲得だけでなく、浸潤・転移により有利となる(=悪性度が増す)ような遺伝子発現パターンの変化も重要な役割を果たします。
LIV1/SnailによるEMT誘導に至る細胞内情報伝達系
(細胞膜から細胞核への情報伝達)
HGF, EGF, TGF-β, FGF(後述のシグナル伝達を参照)などの増殖因子は、EMTを引き起こすことが知られていますが、その中でもHGFとEGFは、
IL-6ファミリーサイトカイン同様、
STAT3(サイトカインの情報伝達因子)および
MAPK(後述のシグナル伝達を参照)の活性化を引き起こします。
活性化されたSTAT3はLIV1(8回貫通型タンパク質で細胞外から細胞内へ亜鉛輸送を担う)の発現を、一方MAPKはSnailの発現を転写レベルで制御します。
LIV1はZinc(亜鉛)依存的にSnailの核移行を制御し細胞にEMTを誘導します。
またLIV1の発現は
estrogen(エストロゲン・女性ホルモン)によっても制御されています。
炎症性タンパク質分解酵素
マトリクスメタロプロテイナーゼ-3(
MMP-3)が、
Rhoファミリー低分子量G-タンパク質(Rac1b)発現の誘導と、EMTの随伴的な誘導能を有します。
これは、
EMT過程におけるRac1bの直接的な役割を示唆しています。
さらに、
MMP-3誘導性EMTに必須の段階であるRac1bは、ミトコンドリアからの活性酸素種(ROS)の産生と放出を刺激することで前EMT転写因子であるSnail1(亜鉛要求性転写因子)発現の誘導を引き起こします。
上皮間葉転換には、亜鉛要求性転写因子Snail1の核移行が重要な役割を担っています。
1)細胞間接着分子Eカドヘリンの発現制御をおこなっている。
2)Snailを高発現するがんは免疫療法に抵抗性がある。
がん細胞が浸潤や転移をするとき上皮間葉転換を起こします。
上皮間葉転換の発生は、慢性炎症や酸化ストレスが関係していると考えられます。
細胞分化能力による分類
結合組織は、器官や組織の間を埋める組織です