腫瘍免疫とは、癌細胞に対する免疫機構です
癌細胞は自己の細胞の遺伝子に変異が生じることによりできたものであるにもかかわらず、宿主の免疫機構による認識を受け、排除されます。
腫瘍免疫には自然免疫系(白血球系)と獲得免疫系(リンパ球系)の両方が関与しており、腫瘍の成長を抑制します。
癌細胞では正常では発現しないはずの抗原が産生されることがあり、これを
腫瘍特異抗原(TSA)と呼びます。
一方、正常組織にも癌組織にも発現している抗原は
腫瘍関連抗原(TAA)と呼ばれます。
これらの腫瘍抗原は細胞の有する遺伝子に変異が起こった結果生じたタンパク質であり、その産生機構については(1)
ウイルス産物(例:EBウイルス)、(2)
癌遺伝子あるいは癌抑制遺伝子における変異、欠失などの変化などが提唱されています。
これらの
腫瘍抗原は下記に示すような細胞により認識され、腫瘍細胞は排除されるはずであるが、実際には免疫寛容と呼ばれる機構が働いて免疫系が腫瘍細胞をうまく認識できないことも多い。
免疫寛容とは自己抗原に対する免疫反応が抑制される現象です
免疫寛容は免疫系の自己抗原に対する特異性に関与しており、免疫寛容の機序としてはT細胞クローンの除去やアレルギー等といったものが知られている。
しかし、この免疫寛容が腫瘍抗原に対しても働くことがあり、
癌細胞は生体の持つ免疫機構から免れるための機構となっている。(癌の免疫回避機構)
その他にも
癌細胞が抑制性のサイトカインであるTGF-βやIL-10を放出して免疫系を負に制御する免疫寛容機構も知られている。
免疫寛容とは:本来は自己なのだがT細胞から見て非自己に見える細胞を攻撃しないようにする仕組みが免疫寛容である。
ある特定の条件の元にT細胞がその特殊な自己抗原に結合した場合に免疫寛容が成立する。
免疫システムに異常をきたし、本来は異物とは認識されない飲食物を異物として攻撃するために起こるのが食物アレルギーである。
免疫とは、細菌などの生体異物(非自己)を排除するための機構であり、正常な状態では自己に対して免疫機構は働きません。
自己と非自己の判別は各細胞が
主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIと呼ばれる分子を介して提示した抗原断片を識別することよって行われます。
細胞障害性T細胞(CTL、キラーT細胞)は、腫瘍免疫の主役を担う細胞であり、ウイルス感染細胞や癌細胞等の除去を担当します。
CTLによって非自己とみなされた細胞は細胞死(アポトーシス)へと誘導されます。
ウイルスや紫外線などにより誘発された腫瘍は抗原性が高く、CTLにより認識されやすい。一方、自然発癌による腫瘍細胞は抗原性が低く、CTLによってはほとんど排除されません。
CTLの分化は樹状細胞からの抗原提示によって誘導されます。
樹状細胞は抗原提示細胞として働くことが知られており、抗原を細胞内に取り込んだ後に分解を行い、その断片を細胞表面に提示します。
抗原提示を受けたヘルパーT細胞は活性化してサイトカインを放出し、CTLの分化・増殖を促します。(
前述で樹状細胞はがん免疫にあまり関わっていないことが分かりました。)
また、
腫瘍免疫には獲得免疫系(適応免疫系)だけではなく、NK細胞やNKT細胞、マクロファージ、顆粒球などの自然免疫も関与しており、癌の進展を抑制しています。
Tリンパ球の種類とその役割
自然免疫は、獲得免疫より応答がすばやい