癌の進展はイニシエーション(第1段階、不死化)
プロモーション(第2段階、増殖)
プログレッション(第3段階、転移及び浸潤)の過程を経て行われています
これらのうち、
プログレッションの段階に血管新生が関与しているのです。
癌の病巣の特徴として
栄養不足、細胞外の低pHそして血流が不足することによる
酸素不足(低酸素)状態が生じ、癌細胞はこの厳しい環境下において新たに血管網を形成することにより病巣への血流を増加し低酸素状態を脱しようとします。
血流の増加は
転移経路の確保にもつながり、低酸素条件化においては転写因子である
低酸素誘導因子(Hypoxia Inducible Factor、HIF-1α)が働き、種々の遺伝子の転写を亢進させます。
HIF-1αは正常酸素圧下でも産生はされるがタンパク質分解酵素であるプロテアソームにより分解されてしまうため機能しません。
HIF-1αは細胞核内へ移行するとHIF-1β(Arnt)と結合します。
HIF-1αのAsp803残基はヒストンアセチル基転移酵素活性を持った分子複合体CBP/p300をDNA上のプロモーター領域である低酸素応答性領域(Hypoxia Responsive Element、HRE)へ運搬し、目的遺伝子の転写を促進します。
VEGFもHIF-1αによって産生が促進される分子の一つであり、血管新生の過程に関与します。
また
慢性炎症は発癌のリスク要因であり、炎症に関与する転写因子NF-κBの活性化を介してVEGFの産生を亢進させます。
血管新生の抑制
インターフェロン及びインターロイキン-4はFGFの産生を抑制することにより内皮細胞の遊走・増殖を阻害する作用を持ちます。
また、p53やPTENなどの癌抑制遺伝子は血管新生を負に制御し、さらに、
MMP阻害薬、VEGF受容体阻害薬及びPDGF受容体阻害薬などの薬物や可溶性VEGF受容体は血管新生阻害作用を示します。
サリドマイドが奇形を引き起こすのは、胎児の手足の末端の血管新生が阻害されて十分に成長しないためであります。現在では、この作用を利用して抗がん剤としての利用が試みられています。