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日本冬虫夏草によるがん悪液質の改善

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日本冬虫夏草によるがん悪液質の改善

悪液質とは
悪液質とは明治時代に作られた、医学用語でcachexia(悪い状態)を意味する訳語です。
定義的には通常の栄養摂取では改善困難な低栄養状態を指す複合的な代謝障害症候群を指し、症状の進行によって臓器機能障害と共に、著しい筋肉組織の減少が確認できることが特徴とされます。
悪疫質はがんに限らず、心臓や呼吸器の疾患などでも見られる症状ですが、がんが進行した際に最大の問題ともいえる要素が悪疫質なのです。
形成された悪疫質が癌に起因していた場合、その悪疫質をがん悪液質(cancer cachexi)」と呼びます。



がん患者の直接死因が悪液質である事をご存知ですか?
医療の研究が進んだ現代においても「がん」が原因となって亡くなる人は年々増加傾向にあります。
日本ではがんによる死亡数は30年で2倍程にもなり、現在では生涯で二人に一人が癌にかかり、その死亡者数は全病死者のおよそ1/3を占めています。
がんを発症した患者が癌の関与によって死に至る確率は全体の67%にもなります。

このように人類の死亡要因の多くを占めているがんですが、患者の皆様はがん組織が人体にどのように影響を及ぼすことで人の命を脅かしているかはご存知でしょうか。
実は、がんによる直接的な死因の大半はがん悪液質に関係したものなのです。
がん患者の死因とその死亡率について
死因
死因の発生原因
死亡割合
呼吸器不全(敗血症)
感染症
悪液質
50%
多臓器不全
感染症
悪液質
27%
抹消循環不全
悪液質
10%
肝不全
悪液質
6%
腎不全
悪液質
2%
中枢神経不全
自律神経の機能障害
悪液質
1%

がんを患った患者の多くは、食欲不振や体重の減少に陥ります。
これは簡単に説明しますとがん細胞が自身の成長や転移のために、人体に必要な栄養源を奪っていってしまっているために起こっているのです。
がん悪液質は栄養の搾取と同時に人体の様々な箇所に慢性的な炎症反応を起こすため、栄養不足や食欲不振だけではなく炎症によって臓器機能にもダメージを与えて患者を死に至らせる原因となります。

この悪疫質による症状(低栄養状態)が患者のQOL(生活の質)を著しく下げる主な原因、つまりは「がんの本質的な病態像」となっているのです。

また、一度発生してしまったがん悪液質にはがん組織の縮小、成長妨害とは別になんらかの対策をとる必要がでてきます。
たとえ、治療の成果によってがん細胞の成長や転移だけを妨害できたとしても、がん悪疫質の改善がされなければがんは変わらず患者を死に至らしめる原因となりえるのです。

どの箇所に出来たがん組織であるかによって低栄養状態の発生率や進行速度に差は見られますが、最終的に不可逆性の悪疫質(低栄養状態)を引き起こすことは変わりません。
膵臓癌や胃癌などでは他に比べて高い頻度の発生率と進行速度が確認されているため、悪疫質に対してより正しい理解が求められていきます。

このようなことからがん患者の延命を考える上で、がん悪疫質という存在はとても重要な立ち位置にあるといえるのです。



がん悪液質によって人体に現れる症状
がん悪疫質は単純な栄養搾取だけではなく、炎症性サイトカインIL-6の過剰産生を誘発して人体に様々な悪影響を与えます。
炎症性サイトカインが過剰に産生された場合、酵素の働きを抑制するため身体機能の繊細な調整が難しくなり、薬の分解能力(肝臓の解毒機能)が低下するため、薬の副作用が強く出ることになります。
最近の研究では、炎症性サイトカインのIL-6は脳神経にも作用して食欲不振、倦怠感、不眠、抑うつ、難治性がん疼痛(神経障害性疼痛)などを引き起こすことも確認されています。
また、タンパク質の不足はアルブミンの産生量低下の原因となります
アルブミンの産生低下は浮腫、腹水、胸水や肝機能の低下に起因したヘプシジンの産生から「癌性貧血」が起こる原因となります。
これらの症状が腹水や貧血の原因となり、患者のQOLを下げる結果に繋がってしまいます。
炎症性サイトカインIL-6の過剰産生によって人体に現れる症状
・肝臓の解毒能力低下による薬の副作用の増加
・脳神経への影響による食欲不振、倦怠感、不眠、抑鬱、癌疼痛(神経障害性疼痛)
アルブミンの低下による低タンパク状態
肝機能低下による肝臓のヘプシジン産生増加

アルブミンの低下による低タンパク状態によって人体に現れる症状
・浮腫、腹水、胸水、肝機能低下

肝機能低下による肝臓のヘプシジン産生増加によって人体に現れる症状
・癌性貧血
最終的に悪液質の改善の見られないまま症状が進行しますと栄養療法で改善出来ないほどの筋肉や体脂肪の減少等が見られるようになります。
目安として体重の30%程度が減少すると、骨格筋のおよそ75%が失われて死に至ります。



がん悪疫質の発生原因となる要素について
1.炎症性サイトカインによる悪疫質の発生
がん悪疫質は人体に多大な影響を及ぼしますが、がん悪液質が発生してしまう理由には、研究の進んだ現代に至っても不明な点が数多くございます。
ですが、近年では生化学的、生物学的解析法の進歩によって徐々に解明されつつあり、その発生原因に炎症性サイトカインが深く関与していることが明らかになりました。

※サイトカインとは
サイトカインは免疫システムの細胞から分泌される細胞同士の情報伝達を行い、細胞の増殖や分化、細胞死などを促すタンパク質です。
サイトカインには炎症性を持つサイトカインと抗炎症性を持つサイトカインがあり、炎症性サイトカインは活性化することで炎色反応を促進させる働きをもちます。
反対に、炎症反応を抑制する働きを持つ抗炎症性サイトカインと呼ばれている物質も体内では産生されており、これらは通常、お互いを調整し合っていますが、がん組織は炎症性のサイトカインの過剰産生を促すことでこのバランスを崩し悪液質の起こりやすい環境を作る他に、全身に及ぶ慢性的な炎症反応や自己免疫疾患が起こる原因にもなります。

2. がん治療の副作用による悪液質の発生
化学療法や放射線療法、免疫療法、外科手術などによる人体へのダメージ、治療後の再発予防のための投薬による副作用でがん悪液質が形成される場合があります。



がん組織の発生から炎症性サイトカインIL-6が過剰産生されるメカニズム
正常な細胞とがんに侵された細胞の主だった違いとして、がん細胞は酸素不足や電子の不足によるミトコンドリアの異常によってATP不足に陥っていることがあげられます。
ATP(アデノシン三リン酸)はエネルギーの放出や貯蔵、代謝や合成に対して重要な役割を果たしている化合物です。
ATPが不足が不足してしまっているがん細胞は代わりに大量の乳酸を分泌します。
この産生された乳酸は人体で酸化ストレスや慢性炎症を引き起こす原因となって炎症性サイトカインIL-23の過剰産生を促します。
IL23は炎症性サイトカインIL-17への分化と維持力を増強し、IL-17はIL-6の過剰な産生を助長して、がん悪液質を誘発する環境を作り出します。



がん悪液質の発生と深い関わりのある炎症性サイトカインIL-6
炎症性サイトカインIL-6(インターロイキン:Interleukin)はT細胞やマクロファージ等の細胞によって産生される免疫細胞の活性化や機能抑制を制御するインターフェロン類のサイトカインの一つです。
がんの発生によって過剰に産生されたIL-6は全身に慢性的な炎症反応が起こすと共に、がん悪疫質が発生しやすい環境を作る原因となってしまいます
このことから、がん細胞によるIL-6の産生量を調整することはがん悪疫質を改善するうえでとても重要な要素となっていることがお分かりいただけると思います。



がん悪液質による体重減少を引き起こす仕組みについて
がん患者の代謝異常や食欲不振、悪疫質を引き起こす原因になっているのは炎症サイトカインが原因となっています。
炎症性サイトカインによって細胞が正常な栄養供給方法が取れなくなると体内ではタンパク質を分解する酵素が常に働き続けることになり、骨格筋、インスリン、脂肪などの物質を分解することでエネルギーを取り出そうとする異化亢進が進んでいきことになります。
この異化亢進の結果、体内のタンパク質の多くがアミノ酸に分解されてしまい、必要となる栄養源の確保ができなくなった全身の骨格筋はどんどん萎縮していき、低栄養状態が発生することになります。
これらのことから、炎症反応や代謝異常、食欲不振、体重減少などを引き起こす悪疫質の根本的な部分での改善には、IL-6の産生量を調整することが重要視されることがお分かりいただけると思います。
※異化亢進によって分解されたエネルギーは糖新生によりブドウ糖に変換され癌細胞の増大に利用されます。




悪液質は進行状況によって三段階に分けられます
がん悪疫質はその進行状況によって3種類の分類に分けられます。
分類名
進行度
状態、症状
1.前悪液質
体重減少5%以下
食欲不振
代謝の変化
2.悪液質
体重減少5%以上
BMI20以下で体重減少2%以上
筋委縮と体重減少2%以上
摂食量低下
全身性の炎症
3.不可逆的悪液質
副腎皮質ホルモンの過剰分泌
炎症性サイトカインの過剰分泌
急激な代謝亢進状態

1.前悪液質
前悪液質は主に初期段階のがんに発生する悪疫質です。
善悪液質は、低栄養状態に陥っているものの十分な栄養を投与すればタンパク質の合成も可能で人体にエネルギーを供給することが可能ですが、悪疫質の特徴である慢性的な炎症状態であることは変わらないため、栄養の投与をやめてしまうと低栄養状態に戻ってしまいます。
消化器癌,頭頸部癌などの一部のがんでは症状や心理的な要因、治療の副作用などから、摂食量が減少しやすくなる傾向があります。
症状の軽い悪疫質だとしても消耗、摂食量低下は、疾患の進展にも影響しますので、経口摂取が可能であれば栄養補助食品などで積極的に栄養補給を行うべきです。

2.悪液質
悪疫質は前悪液質と比べ、進行した状態の悪疫質です。
悪疫質も適切な栄養投与で症状の改善が見込めますが、肝機能や腎機能の低下から重い食欲不振や吐き気、意識障害などが起こる場合があります。

3.不可逆的悪液質
不可逆的悪疫質は病状が進行して細胞レベルでエネルギーが作れなくなってしまった状態です。
栄誉を投与してもタンパク質の合成でエネルギーを取り出せなくなっているために、無計画に栄養を摂取すると余計に身体に負担がかかることになります。
症状の重い悪疫質は副腎皮質ホルモンや炎症性サイトカイン等の過剰分泌がおこり、激しい代謝亢進状態となるため、急激な低栄養状態を引き起こし全身状態の悪化を招きます。



現在の栄養状態を確認することで予後を予測することができます
がんによる症状の重さ(悪疫質の進行具合)は体内の炎症の進行具合と血中に含まれるタンパク質を計測することである程度の判断が可能です。
下記はタイプを分ける際の指標となる成分です。

C-リアクティブ・プロテイン(CRP)
炎症や組織細胞の破壊が起こると血清中にCRPと呼ばれるタンパク質が増加します。
血中のCRP産生量は炎症が強まればすぐに増加し、逆に収まれば素早く減少するといった特徴があります。
悪疫質が進行しますと炎症性サイトカインの働きにより慢性的な炎症が見られるようになりますのでCRPの産生量を計測することは病気の進行度や重症度、経過、予後などを知るうえでは大切な指標となっています。

アルブミン(Alb)
アルブミンは血中に存在するタンパク質の半分以上を占めている代表的なタンパク質です。
アルブミンは十分なエネルギーがあれば肝臓で生合成され、血中に放出されます。
つまり、血中のアルブミン量を測定して、不足している場合は肝臓の機能障害や低栄養状態に陥っていることが疑われます。

下記の図はCRPとアルブミンに関して血液1dl内に規定した数値を満たすかでグループを振り分けたものです。
(CRPを0.5㎎/dl、アルブミンを3.5g/dlで各2群に分類)

CRPとアルブミン(Alb)を用いた悪液質の評価
グループ
CRP規定値0.5mg/dl
Alb規定値0.5mg/dl
判定結果
A群
×
正常
B群
×
×
通常低栄養
C群
悪疫質予備軍
D群
×
悪疫質

A群:炎症反応もなく血中の栄養も位置届いている正常なパターンです

B群:炎症反応がないですが、血中の栄養分が不足している通常の栄養不足です

C群:炎症反応が起こっているが、血中の栄養が位置届いているので、悪疫質以外が原因となる炎症反応が起きているか、低栄養状態に陥る前の悪疫質の可能性がある悪疫質予備軍となります

D群:炎症反応が起きており、かつ血中の栄養も不足している、悪疫質の可能性が非常に高いグループになります

この4つのグループを大腸癌の患者で振り分けたところA、B群の平均生存期間が36カ月なのに対してC、D群ではわずか8カ月にとどまるという結果が現れました。
こうした悪疫質およびその予備軍の傾向は大腸癌以外の固形癌にも共通しているため、がんの予後判定に有用な結果を残しています。



摂取する脂肪酸の種類は悪液質改善において重要な要素です
がん細胞も転移や増殖を行うためにエネルギーを得ようとします。
このエネルギーをがん細胞は脂肪酸合成酵素であるFASNを産生して、脂肪成分(ω-6)を脂肪酸に合成することで得ています。

FASN
FASNは脂肪成分の1種であるω-6をがん細胞の扱えるエネルギーに変換するための酵素です。
FASNの働きによって合成された脂肪酸は、がん細胞の構成要素となりがん細胞の成長を促進させます。
がんを患った際の体重減少の主な原因となるのは脂質ががんにエネルギー源として消費されてしまうことによる脂肪の損失であり、脂肪分の減少が人体の低栄養状態であるがん悪疫質を引き起こす原因となるのです。
このように人体の主なエネルギー源でもある炭水化物やたんぱく質、脂質をがん細胞が同じように成長するためのトリガーとして利用していることが悪疫質の改善を困難にさせている要因の一つだといえます。

ですが、がん細胞は全ての脂肪成分からエネルギーを合成できるわけではございません
脂肪分には大きく分けて、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸の2つがあり、がん細胞がエネルギーを得ることができるのは不飽和脂肪酸の1種であるω-6です。
ω-6は主に肉類に含まれており、プロスタグランジンE2(PGE2)と呼ばれる生理活性物質を作り出します。
このPGE2は細胞の増殖や活動を促進して、細胞死が起こりにくい環境を作り出す作用があるため、プロスタグランジンE2(PGE2)が増えすぎてしまうとがん細胞の増殖や転移を促進してしまうのです。

一方で、同じ不飽和脂肪酸の1種であるω-3はPGE2の体内での増殖を抑える働きがあります
ω-3は主にDHAやEPAなどの魚類に含まれている脂肪酸で、腫瘍形成と癌の転移を阻害し、免疫系に刺激を与え、乳酸レベルやインスリン濃度を下げ、悪液質を改善し、治療反応を増強させる効果があります
がん細胞はω-3をエネルギー源として脂質を利用することが困難ですが、がん患者は、ω-3を酸化させてエネルギーを得ることができることからも、ω-3は悪疫質の発生予防やがんの再発予防に効果的な成分の一つだといえます。

※DHAやEPAは過剰に摂取すると、血液が固まる力を弱めて、出血しやすくなる場合があるため、摂取量には注意が必要です



がん悪液質に関連した様々な液性因子や成分
腫瘍壊死因子TNF-α
腫瘍壊死因子とはサイトカインの一つで、TNF-α、TNF-β、LT-βの3種類があります。
このうち、TNF-αは代表的な炎症性サイトカインの一つです。
実験で、TNF-αは悪疫質を発生、悪化させる原因となっていることは確認されていますが、抗TNF-α抗体投与を投与する実験を行っても、悪疫質の改善効果は確認できませんでした。
このことから、TNF-αの存在は、他の腫瘍因子や炎症因子に対して作用することで悪疫質の発生を助けている促進因子ではないかと考えられています。

IL-6
IL-6もTNF-αと同じく、代表的な炎症性サイトカインの一つです。
IL-6は単独、あるいはTNF-αとの相乗作用によって、全身に炎症反応を生じるとされています。
がん患者の血中に含まれるIL-6の濃度を確認することによってがん悪疫質の進行状況を測定することができます。

悪疫質に対して、抗IL-6モノクローナル抗体を投与した場合、食欲不振、易疲労感、貧血の改善効果が見込めますが、悪疫質の根本的な解決にはならないため、脂肪体重の減少には効果がありません。

ミオスタチン
ミオスタチンは、筋繊維から産生されるサイトカインで、筋肉の成長を抑制する効果があることが知られています。
ミオスタチンは筋の増殖や分化の制御に加え、糖脂質代謝にも重要な役割を果たすサイトカインであり、さらに骨再生の制御にも関与しています。
がん患者の場合は体内での、ミオスタチンレベルと関連シグナルの増加が確認されています。

グルココルチコイド
グルココルチコイドは、副腎皮質の束状層で産生される、副腎皮質ホルモンの一つです。
タンパク質を糖化して血糖値を上昇させる作用があり、医薬品としては抗炎症剤や免疫抑制剤として使われます。

インスリン
がん悪液質の患者は、昔から耐糖能異常が見られる事が知られています。
耐糖能異常とは食事の摂取後に上昇した血糖値が長時間低下せず、高血糖を維持してしまう症状を言います。
この耐糖能異常の原因はインスリン分泌の低下やインスリン代謝の促進、つまりインスリンの機能が正常に働いていないことによって起こります。
がん患者では、インスリン受容体の機能が低下していることが報告されており、これを改善または適切なインスリン投与を行うことで、筋肉量や脂肪組織の増加、栄養状態の改善が認められる場合があります。
インスリンは、がん細胞の増殖にも関わっている因子ですが、悪液質が進行している場合はインスリンを使用してもがん細胞の増殖は認められないため、悪疫質の治療効果が期待されています。

L-カルニチン
L-カルニチンは、ミトコンドリアのβ酸化によるアセチルCoAの産生に関与している細胞のエネルギー産生に必須となる分子です。
がん患者のL-カルニチンの産生量は通常と比べて減少されていることが注目されており、不足したL-カルニチンの投与によって補うことで患者の食欲の改善や筋肉量の増加、疲労感の改善作用が認められています。



漢方医学療法研究会が提案するがん悪液質改善方法
腫瘍細胞だけではなく、悪液質の状態も確認する必要があります
悪液質の改善は三大療法では見込めません、化学療法ではがん細胞の縮小が確認できたとしても副作用によって更に症状が悪化する場合もあります。
悪液質はがんの殆どの症状の根本的な原因となっており、一度進行してしまった悪液質は腫瘍の状態とはそれほど関係なく人体に悪影響を及ぼし続けるのです。 このため、がんによる症状の改善には腫瘍の縮小だけではなく悪液質の状態にも注目して治療を行う必要があるのです。

近年注目されている集学的治療の重要性
がんにおける理想的な治療方法は腫瘍組織の縮小と悪液質の改善を同時に行うことです。
漢方医学療法は悪液質に対して有効な成分が複数含まれており、他に進めている治療との副作用のリスクがとても低く、三大療法だけでは改善出来ない部分をフォローすることが出来ます。
このような一つの療法のメリットを高め、デメリットとなる部分を塞ぐ為に複数の治療方法を組み合わせて相乗効果を狙う治療方法を集学的治療と呼びます。
漢方医学療法は悪液質に対して三大療法などと組み合わせた際の集学的治療としての適正が高く、QOLの向上や延命を目指して治療を行う上で必要な条件を満たした療法といえるでしょう。



日本冬虫夏草『ツクツクホウシタケ』の悪液質改善効果
上記の項目をお読み頂いた方には炎症性サイトカインの癌の進展や転移に対する影響力はご理解いただけたかと思います。
漢方医学療法研究会で研究されてる日本冬虫夏草の一つであるツクツクホウシタケには炎症性サイトカインの活性化を抑制する成分であるミリオシンが含まれています。 炎症性サイトカインの産生を阻害することでがんの直接的な死因となるがん悪疫質を改善する効果が期待できるのです。
※ミリオシン
ミリオシンは、台湾ツクツクボウシ(蝉)の幼虫に寄生する冬虫夏草の一種であるIsaria sinclairii 菌の培養液から始めて単離された免疫抑制作用を有する化合物です。
その後、日本冬虫夏草の一種ツクツクホウシタケ培養液からも単離され、類縁体との合成などを通して、薬剤として利用するための研究がなされています。
ミリオシンからは「FTY720」と呼ばれる新薬が開発されており、免疫抑制作用による、臓器移植の拒絶反応抑制や自己免疫疾患、C型肝炎ウィルスなどに対する効果が期待がされています。



がん悪疫質における腹水・胸水の原因
1.悪疫質の影響によるアルブミン量の低下によるもの
肝臓が悪疫質の影響によって機能不全に陥ることによってアルブミンの産生量が低下がして、腹腔や胸部に水分が溜まります。
※アルブミン:アルブミンは血中に含まれるタンパク質の一種で、血管中に水分を保ち、水分を血管の中に引き込む働きをしています。

2.炎症性サイトカインの働きによる炎症反応によるもの
悪疫質によって全身に炎症反応が起こると血管内の水分が染み出しやすくなるため体内に水分が溜まりやすくなります。

腹膜や胸膜に癌が転移して炎症を起こす(癌性腹膜炎、癌性胸膜炎)と腹腔内に腹水や胸膜腔内に胸水が溜まります。
この場合、腹水や胸水を抜くと癌性出血が見られる場合があります。



腹水・胸水の改善
食事療法によるアプローチ
がん悪疫質の影響による腹水、胸水は主にアルブミンの産生低下によって起こります。
アルブミンは炎症性サイトカインであるIL-6による働きによって産生が抑制されるために、がん患者はアルブミン不足に陥るのです。
アルブミン不足を解消するには産生を妨害するIL-6の産生抑制を成分を多く含んでいる動物性食品の摂取を意識するといいでしょう。
動物性食品にはアルブミン不足の解消以外にも肝臓や腎臓機能の改善も見込めます。

代表的な動物性食品 ヨーグルト、無塩バター、カッテージチーズ、各種卵、肉類など



日本冬虫夏草による腹水、胸水の改善効果
日本冬虫夏草の一種であるハナサナギタケにはがん細胞の増殖を抑制する成分のコルジセピンが含まれています。
コルジセピンは私たちの生命活動のエネルギー媒介物質ATP(アデノシン三リン酸)同様の構造骨格を持つ為がん細胞に取り込まれ易い事で、がん細胞の代謝や増殖を阻害する作用が期待できます。

日本冬虫夏草の抗腫瘍効果としてDNAやRNAの合成阻害作用や、アポトーシス誘導作用、転写因子のNF-κB活性の阻害、がん細胞 の増殖シグナル伝達の阻害などの作用があります。
これらの効能により免疫力の向上や炎症や癌の進行を抑えて、腹水や胸水の症状を抑える効果が期待できます。

日本冬虫夏草には癌の浸潤を促進しているタンパク質分解酵素の1つであるマトリックスメタロプロテアーゼの働きを阻害する作用があります。
マトリックスメタロプロテアーゼの働きを抑えることで癌の浸潤・転移阻害、虚血性脳及び心疾患防止、抗炎症作用、血管新生阻害作用などの効果が期待できます。
がん細胞の進行を抑え、腹膜や胸膜の抗炎症性を強めることで、腹水や胸水の症状を抑える効果が期待できます。



がん悪疫質における貧血、疼痛症状の原因
貧血とは血液が薄くなった状態のことを指します。
医学上は血液中のヘモグロビン濃度や赤血球数、容積率が基準値未満になった状態とされますが、通常はヘモグロビン濃度が基準値を下回った場合を貧血とします

ヘモグロビン
ヘモグロビンは肝臓で産生される一種のペプチドホルモンで、鉄代謝制御機構の中心的役割を演じています。
水と合わせて赤血球の成分の殆どを占めており、酸素を全身の組織に届け、二酸化炭素を運搬し体外に放出する役割を持っています。

ヘモグロビンは鉄から合成されますが炎症サイトカインIL-6による慢性的な炎症はヘプシジンと呼ばれる鉄輸送機能を制御している分子を過剰に産生させてしまい、鉄のヘモグロビンへの合成を妨害します。
ヘプシジンの働きかけで血中のヘモグロビン産生量が減ってしまうと、酸素の運搬が十分に行われなくなり「癌性貧血」が起こります
ヘプシジンの産生量を抑えることが出来れば、ヘモグロビンの産生が増えて貧血を抑えることが出来ます。

IL-6がヘプシジンを産生させる原因はシグナル伝達分子であるSTAT3の作用であることが明らかにされています。
癌細胞の増殖や転移などのIL-6に属する炎症性サイトカインの作用は主にSTAT3が原因になって起こっています
また、自然免疫、炎症応答を担うTLRシグナルやNF-κBの活性化をSTAT3が調節することが報告され、自然免疫の制御因子としても注目されています。
※NF-κB:免疫反応において中心的役割を果たす転写因子の一つで、活性化すると急性、慢性炎症的な反応が起こって、がん細胞は死ににくくなり、増殖や転移が起こりやすくなります
ストレスやサイトカイン、紫外線等の刺激や悪性度の高い腫瘍ではNF-κBの恒常的活性化が見られる場合が多い。



日本冬虫夏草による貧血、疼痛の改善効果
日本冬虫夏草の1種であるハナサナギタケには、腎臓で産生されるホルモンの一つであるエリスロポエチンの産生促進をします
エリスロポエチンは、骨髄に働きかけ赤血球の産生を促進させるため癌性貧血に対して効果が期待できます。

また、日本冬虫夏草の1種であるツクツクホウシタケに含まれるミリオシンは、免疫抑制作用を有する化合物でNF-κBを抑制する作用があり、ヘプシジンの産生を抑制させて癌性貧血の改善が見込めます。
この他に、IL-6の産生を抑制してがんの進行予防や臓器移植による拒絶反応の抑制、自己免疫疾患の治療などに効果を発揮します。



貧血の原因となる赤血球不足を改善するために必要な成分、食品例
1.アルギニン
アミノ酸の1種であるアルギニンは造血幹細胞が赤血球に分化するために必要な成分です。
造血幹細胞自体の増殖には食物由来の核酸が有効です。

アルギニンを多く含む食材(1日の推奨摂取量 1500~3000㎎)
魚介類:かつお節 4,000mg ・しらす干し 2,500mg ・伊勢海老 2,000mg ・くるま海老 2,000mg ・すじこ 2,000mg ・しまエビ 1,700mg・ 毛蟹 1,500mg ・シャコ 1,400mg ・クロマグロ 1,400mg・ はも 1,400mg ・きはだマグロ 1,300mg ・カツオ 1,300mg ・くろかじき 1,300mg ・さわら 1,300mg・豆類:大豆たんぱく 7,000mg ・湯葉 4,400mg・高野豆腐 4,200mg ・きなこ 3,000mg ・全粒大豆 3,000mg ・ラッカセイ 3,000mg ・大豆 2,800mg ・ごま 2,700mg ・そらまめ 2,400mg ・アーモンド 2,100mg

2.ビタミンB12
ビタミンB12は肝臓に蓄えられている人体では合成できない人工産物のビタミンです。
B-12が不足すると正常な赤血球が作られなくなり、大球性正色素性貧血(巨赤芽球性貧血)の一種であるビタミンB12欠乏性貧血が引き起こされます。
B-12は貯蔵量が多く、必要量も多くないので、通常は足りなくなることはありませんが胃の摘出手術を行った方は、B-12の吸収を助ける因子が機能せずに、不足する場合があります。

ビタミンB-12を多く含む食品(1日の推奨摂取量 2.4μg)
魚介類:イクラ17g 8.0μg ・たらこ 1腹60g 10.9μg ・にしん 1尾200g19.1μg ・まいわし 1尾80g 6.2μg ・さんま 1尾150g 16.1μg ・かつお節 1パック5g 0.7μg ・めざし 1尾20g 2.5μg ・まさば 1切れ80g 10.3μg ・辛子明太子1腹60g 6.8μg ・ほっけ 1尾500g 26.8μg ・あゆ 1尾80g 4.5μg ・ほたるいか1枚10g 1.4μg ・しゃこ 1尾30g 3.9μg ・するめ 1枚110g 13.5μg ・さくらえび(素干し)大さじ1杯3g 0.3μg ・ほしえび大さじ1杯8g 0.8μg ・ほしのり 1枚3g 2.3μg ・味付けのり小10枚3g 1.7μg ・焼きのり小10枚3g 1.7μg ・いわのり(素干し1枚10g 4.0μg ・あおのり(素干し)大さじ1杯2g 0.6μg ・レバー:鶏肝臓 1個40g 17.8μg ・豚肝臓 1切れ30g 7.6μg

3.葉酸
葉酸もビタミンB-12と同じように、肝臓に蓄えられる人体では合成できない成分で不足すると葉酸欠乏性貧血の原因となります。
葉酸はB-12と比べ、人体での必要量が多いため偏った食生活で不足する場合もありますが、多くの食物に含まれているために改善は容易です。

葉酸を多く含む食材(1日の推奨摂取量 480μg)
鶏肝臓1個40g 520μg ・豚肝臓 1切れ30g 243μg ・フォアグラ 厚1cm角6cm45g 99μg ・いわのり1枚10g 150μg ・えだまめ(ゆで)さや75g(39g) 93μg ・めキャベツ(ゆで)5個50g(50g) 110μg ・アスパラガス(油いため)3本 60g(60g)132μg ・ケール1枚200g(194g) 233μg ・そらまめ(ゆで)カップ1杯100g(75g) 90μg ・ブロッコリー(ゆで)1個165g(165g) 198μg ・茎にんにく(ゆで)10本100g(100g) 120μg ・ほうれん草(油いため)1/2 105g(100g) 140μg・とうもろこし(ゆで)1本220g(154g) 132μg ・アボガド 1個230g(161g) 135μg ・マンゴー1個300g(195g) 164μg ・ひよこまめ(ゆで)カップ1杯130g 143μg ・玉露(抽出液)カップ1杯200g 300μg