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漢方医学療法について
細胞周期 Cell Cycle
細胞周期とは細胞分裂で生じた娘細胞が、再び母細胞となって再び細胞分裂を行い、新しい娘細胞になるまでの過程を細胞周期と言います。
細胞増殖の周期は細胞の生存、成長に応じて厳密に制御されています。



細胞周期チェックポイントとは、細胞が正しく細胞周期を進行させているかどうかを監視(チェック)し、細胞に異常や不具合がある場合には細胞周期進行を停止(もしくは減速)させる制御機構のことであり、細胞自体がこの制御機構を備えています。
細胞周期機構の破たんは、がん(癌)が形成される原因の一つにもなっています。

分裂期:M期は連続した2つの過程、有糸分裂と細胞質分裂で構成される
間期:細胞が分裂し、生じた娘細胞が再び有糸分裂を開始するまでの間、つまりM期と次のM期の間を間期(interphase)と呼び、細胞の成長、物質の吸収、生合成、遺伝情報と全ての細胞小器官の複製、また代謝など、細胞としての機能はこの時期に行われる。

G1期M期が終わり、DNA合成が始まるまでの期間は、間期における最初の期間であり、G1期(Gはgapを意味する)と呼ばれる。G1期は別名成長期とも言われる。この期間中、M期では顕著に低かった細胞の生合成活性が再び高まる。G1期では、次のS期で必要とされる種々の(主にDNA複製に用いられる)酵素が合成される。また細胞小器官の合成も盛んで、関連する構造タンパクと酵素が多量に消費されるため細胞内の代謝が活発な期間でもある。
G1/SチェックポイントG1期からS期に移行する際のチェックポイント。G1期DNAに損傷がないこと、これからのDNA複製のためのヌクレオチドなどが十分あること、細胞の大きさがチェックされる。多細胞生物では、増殖が許されているか(たとえば、サイトカインがあるか)、増殖が必要な細胞であるか、などもチェックされる。
がん抑制遺伝子産物p53RbとRbのホモログはこの制御を司っている
と言われる。
S期G1期に続くS期(Synthesis phase)はDNA合成と同時に始まる。 S期の最初では、それぞれの染色体は、染色分体と呼ばれるコイル状にまとめられたDNA二重らせん分子で構成されている。DNAヘリカーゼが二重らせんの水素結合を切断して1本鎖を作り、続いてDNAポリメラーゼが相補的塩基対を結合させることで半保存的DNA鎖を2本生成する。DNA合成が完了し、全ての染色体が複製された(言い換えれば、それぞれの染色体がセントロメアでつながれた姉妹染色分体持った状態になった)ところでS期は終了する。
S期チェックポイントS期のDNA複製の速さを制御し、DNA複製に不具合が検知された場合、複製を遅らせる機構。DNA損傷ではヒトのATMタンパク質(リン酸化酵素)はこの制御に関与していると言われる。
G2期細胞は、有糸分裂前の最後の期間であるG2期に入る。G2期では再び盛んなタンパク質合成が行われ、有糸分裂に必要な微小管が主に作られる。一般に間期の中ではG2期が最も短く、例えばヒトの細胞では多くの場合4~5時間で終了する。G2期にはG2/Mチェックポイントがあり、細胞がM期に進めるかどうか判断している。
G2/MチェックポイントG2期からM期に移行する際のチェックポイント。
この制御がDNA損傷などで活性化するとM期開始が阻害され、細胞はG2期にとどまる。DNA損傷応答においては、ATR(ataxia-telangiectasia mutated related ATMと同意語)がそれ自身かあるいは他の因子によって損傷を認識した後にリン酸化を受け活性化されると、ATRはChk1をリン酸化して活性化する。
活性型Chk1はCdc25Aのリン酸化を下方制御し、リン酸化Cdc25AによるCdc2の脱リン酸化を阻害するため、Cdc2は高リン酸化された不活性な状態に保たれ、M期に進行せずに細胞周期が停止する
DNA損傷認識後のATRのリン酸化に関わっている因子は現時点でははっきりしていないが、ヒトがん抑制遺伝子産物BRCA1がその役割を担い、DNA損傷に応答したG2/Mチェックポイントの制御を司っているとも言われている。
DNA複製終了を待たずに、M期が開始する酵母変異株を考慮すると、監視(チェック)期間はS期からG2期にわたる比較的長い期間であると考えられる。
M期この段階で細胞の成長は停止し、活動エネルギーは分裂に集中される。分裂の途中M期チェックポイントで完全な分裂への準備ができているかが確認される。
有糸分裂が失敗すると細胞はアポトーシスを起こして消えるか、突然変異を起こしてがん発生の原因ともなる。
G0期細胞が周期から去った、または分裂を止めている休止期。

細胞は常に増殖している訳ではない
体内の大多数の細胞が常に増殖しているのかというとそうではありません。
細胞増殖の調節を考えたとき、多くの細胞はG0期にとどまり細胞分裂を停止します)。
G0期とは増殖能力は保ちつつも細胞分裂を停止している状態のことを指します。

実は、体内に存在する細胞のほとんどはG0期にとどまっており、増殖を停止しています。
これは細胞が接触しているために生じる性質として考えられておりコンタクトインヒビション(細胞の接触障害)と呼ばれています。
これによって臓器が過剰に大きくなったりすることを防止しています。

しかしながら、がん細胞ではG0期にとどまることはせず無制限に増殖を続けます。
このためがん組織が膨らみ続けひずみが生じ、組織が破損してしまうため激しい痛み(疼痛)を生じます。
がん細胞と正常細胞の違いはG0期にとどまる能力があるかないかとも考える事ができます。

ヒト細胞で常に分裂増殖している細胞は骨髄細胞、皮膚上皮細胞、腸管上皮細胞です。
通常は増殖を停止しているが必要に応じて増殖する細胞は、血管内皮細胞、皮膚線維芽細胞、リンパ球で、分裂能を失った細胞は神経細胞、心筋細胞で、細胞周期の長さは、細胞によってかなりの差があり、例えば腸の上皮細胞は約12時間、肝細胞は約1年です。


リン酸化による細胞周期の制御