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がん(癌)細胞の腫瘍血管新生

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漢方医学療法について
がん(癌)細胞の腫瘍血管新生
細胞の栄養は、通常拡散によって運ばれています
巨大に成長する癌細胞は大量の栄養を必要とする為そのままでは壊死してしまいます。

この問題を解決するために、がん(癌)細胞は勝手に血管を作って自分の所まで栄養を送ってくるのです。
これが、がん(癌)細胞の血管新生作用です。
がん(癌)細胞は血管を作るために、血管新生因子を放出します。
この因子をVEGF(vascular endothelial growth factor)と言います。


がん(癌)細胞から放出されたVEGFはがん(癌)細胞まで血管を新生させます。
このように、がん(癌)細胞ができることによってがん(癌)細胞周囲の環境に変化が起こることがあります。

□拡散と間質液
間質液(かんしつえき)とは、多細胞生物の組織において細胞を浸す液体であり、細胞外液のうち血液とリンパ管の中を流れるリンパ液を除く体液である。

組織液・細胞間液・細胞間リンパ液とも呼ばれ血液により運ばれた酸素やタンパク質などの物質は毛細血管壁を介して間質液へと拡散した後、間質液から組織の細胞へと拡散する。

リンパ管内の体液のみをリンパ液と言う場合もあるが、間質液との明瞭な区別はなく海外では間質液をリンパ液と呼ぶことが多い。

間質液は、血管膜を通して膠質浸透圧と筋などの圧力の変動によって静脈に主に水分と血液ガスが再吸収され、タンパク質や老廃物ウイルスやガン細胞などの異物など、分子量の大きいものはリンパ管に吸収される。

ヒト1人の体内には平均11リットルの間質液が含まれ、細胞へ栄養素と酸素を運ぶとともに老廃物や二酸化炭素を運び去っている。


血管内皮細胞成長因子 VEGF(vascular endothelial growth factor )
血管内皮細胞成長因子、血管内皮増殖因子、血管内皮成長因子などと呼ばれる。

VEGFは主に血管内皮細胞表面にある血管内皮細胞増殖因子受容体 (VEGFR) にリガンドとして結合し、細胞分裂や遊走、分化を刺激したり、微小血管の血管透過性を亢進させたりする働きをもつが、その他単球・マクロファージの活性化にも関与する。

リガンド:特定の受容体(receptor; レセプター)に特異的に結合する物質のことで、リガンドが対象物質と結合する部位は決まっており、選択的または特異的に高い親和性を発揮する。
例えば、酵素タンパク質とその基質、ホルモンや神経伝達物質などのシグナル物質とその受容体などがある。

遊走:組織内を自由に移動し活動すること。
遊走細胞:白血球は、血液・組織液中にあって呼吸色素(ヘモグロビンなど)をもたない細胞の総称である。
血液中の白血球は免疫にかかわる細胞で、白血球にはリンパ球やマクロファージなどがある。
リンパ球には、異物(抗原)を認識し、抗原と直接に反応するT細胞と、抗原と反応する抗体をつくるB細胞がある。これらの白血球は血管とリンパ液を通って体内を循環している。

マクロファージは、体内に侵入した抗原を細胞内に取り込んで消化するほかに、抗原の情報をT細胞に伝える。
多くの異物を取り込むと白血球も死に、分解産物とともに膿(うみ)になる。


癌細胞が産生するVEGF
血管新生を促進する作用を持った増殖因子である血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor、VEGF)は癌細胞などにより産生されることが知られています。

VEGFは内皮細胞の細胞膜上に発現している血管内皮細胞増殖因子受容体に結合し、この受容体の刺激により活性化された内皮細胞はタンパク質分解酵素の一種であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を放出します。

MMPは血管の基底膜及び細胞外マトリックスを分解し、血管透過性を亢進させ、さらに内皮細胞の細胞外マトリックスへの遊走及び増殖により新しく直鎖状の血管が作られ、その周囲は平滑筋細胞や血管壁細胞により支持されて安定した血管となります。
(前述 がんと細胞外プロテアーゼ:特にMMPについて 参照)


がん(癌)の増殖因子と受容体
癌の進展と血管新生・低酸素状態とHIF-1遺伝子