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白血病における漢方医学療法

漢方医学療法研究会は漢方医学療法が、がん闘病者の治療の福音になればと研究を重ねてきました。
漢方医学療法の作用の一部を闘病者の声として頂いており、声の中から重要度の高い項目に関しての資料をご用意しました。
当研究会の研究成果や実績については「漢方医学療法のがん治療研究における成果」をご覧ください。

医療相談

白血病とは骨髄中、あるいは末梢血(体内を流れている血液)中に異常な白血球が無制限に増加する病気です。

白血病は急性白血病と慢性白血病に分かれ、急性白血病は急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病があります。
慢性白血病も慢性骨髄性白血病と慢性リンパ性白血病があります。

この他、血液のもとを作る造血幹細胞の病気、骨髄異型性症候群も血液がんです。

治療方法や治療目標も多少異なり、寛解を目指した治療でも途中で中断、あるいは断念せざるを得ない事もあります。
それは強烈な抗がん剤治療から来る副作用があげられます。
また、寛解しても完治ではありませんので、再発を考慮しなければなりません。

白血病治療に不安や行き詰まりを感じたり、化学療法(抗がん剤治療)の副作用の軽減、全身状態の改善、QOL(生活の質)の向上、延命、治癒を目指す白血病の治療法を検討されている方。
お問い合わせをお考えの方はまず「漢方医学療法を始めるにあたって」をご覧ください。

西洋医学との併用、あるいは西洋医学以外のアプローチ方法もございますので、白血病治療の無料相談よりお問い合わせ下さい。

急性骨髄性白血病(AML)とは

非常に早い経過を辿り、放置すれば必ず命を落としてしまう悪性の病気です。
急性白血病の由来する血球細胞は、造血幹細胞からある程度成熟した、若い段階で成熟が止まり、機能をほとんどもたない骨髄芽球と呼ばれる未熟な白血球としてどんどん増え続けます。

そして、時には過剰な数の幹細胞が異常な赤血球や血小板になる事もあります。
このような異常な白血球、赤血球、血小板は、白血病細胞や白血病芽球とも呼ばれます。白血病細胞は骨髄や血液に蓄積する事があり、その場合には正常な白血球や赤血球、血小板のためのスペースが少なくなってしまいます。

その理由は、正常な血球は寿命を持ち、造血が適切なコントロールを受けているために一定の数を保っています。
しかし白血病細胞はコントロールを受ける事なく増殖を続けるために無制限に数を増し、骨髄中で正常な造血細胞を圧倒して正常な造血を阻害するために、正常な白血球や赤血球、血小板が減少するのです。(骨髄に蓄積)
そしてさらに、骨髄中から末梢血へとあふれ出てきます。(血液に蓄積)

その結果、貧血(赤血球減少)や感染症(白血球減少)にかかりやすくなったり、出血が止まらなくなる(血小板減少)という症状が起こります。

白血病細胞はさらに、中枢神経系(脳と脊髄)、皮膚、歯ぐきなどの血液以外の部位に拡がっていく可能性もあります。
また、肝臓、脾臓、リンパ節等いろいろな臓器にも白血病細胞が侵入し、これらが次第に大きくなる事で(腫大と呼ばれる)、いろいろな障害を引き起こす事になります。

急性骨髄性白血病のリスク因子

急性骨髄性白血病を発生する危険性を増大させるものをリスク因子といいます。
リスク因子
・男性である。
・喫煙者である(特に60歳以上の方)。
・過去に化学療法か放射線療法を受けた経験がある人。
・過去に小児急性リンパ芽球性白血病に対する治療を受けた経験がある人。
・ベンゼンという化学物質に曝された事のある人。
・骨髄異形成症候群などの血液疾患の病歴がある人。


急性骨髄性白血病の病型分類

骨髄の中には造血幹細胞から種々の血球に分化していく途中の細胞があり、それらの内のどの段階の細胞が腫瘍化したかによるFAB分類 (French-American-British criteria) に基づいてM0-M7の病型、およびそれらの亜型に分類されます。
FAB分類は染色を用いた顕微鏡的観察に基づくものであり、近年は分子遺伝学的な観点に基づいたWHO分類が用いられてきています

WHO分類(急性骨髄性白血病および関連前駆細胞性腫瘍)

特定の遺伝子異常を有するAML(AML with recurrent genetic abnormalities)

AML:t(8;21)(q22;q22);RUNX1-RUNX1T1
FAB分類のM2の約10%に認められる。
骨髄肉腫のような腫瘤形成を認める場合は骨髄の芽球比率が20%を切る場合があるが、変異の存在が確認されれば急性骨髄性白血病と診断される。
化学療法に対する反応性が良い。
AML:inv(16)(p13.1q22) または t(16;16)(p13.1;q22):CBFB-MYH11
FAB分類でのM4Eoに相当する。
化学療法に対する反応性が良い。
APL:t(15;17)(q22;q21);PML-RARA
FAB分類のM3に相当する。
治療法、予後が他のAMLと異なる。
PML以外の遺伝子との転座を起こすRARA遺伝子転座を有する症例がある。
APLとは形態や治療反応性が異なるため、「非定型なRARA遺伝子転座を有するAML」と診断される。
AML:t(9;11)(p22;q23);MLLT3-MLL
ほとんどがM5の形態をとる。
第3版ではMLLT3以外の遺伝子と転座を起こすMLL遺伝子転座を有するAMLをまとめて「11q23MLL異常を伴うAML」として分類していたが、MLLT3-MLL以外の転座を有するAMLは予後が悪いため、この転座を有するAMLのみを独立して分類する事となった。MLL転座を有するものでも、抗がん剤などの治療履歴のある場合、あるいはMDS関連染色体を有する症例は、治療関連骨髄性腫瘍、MDSに関連した変化を有するAML、にそれぞれ分類される。
AML:t(6;9)(p23;34);DEK-NUP214
APLとM7以外のすべての形態をとりうる。予後不良である。
AML:inv(3)(q21q26.2)またはt(3;3)(q21;q26.2);RPN1-EVI1
APL以外のすべての形態をとりうる。
血球の異形成が著明である。
予後不良である。
AML (megakaryoblastic):t(1;22)(p13;q13);RBM15-MKL1
AML全体の1%以下の稀なタイプで、さらにDown症を伴わない3歳未満の乳幼児に多いという特徴がある。
FLT3、KITなどの遺伝子変異などは高頻度に認められ予後不良因子となるが、すべての病型のAML, MDSに認められうる事から、独立した疾患分類とはなっていない。
NPM1、CEBPA遺伝子の変異は染色体が正常核型のAMLに高頻度に認められ、ある程度の形態的・臨床的特徴を示すが、さらなる検討を要するという事で"暫定的病型"(provisional entity)とされている。

骨髄異形成に関連した変化を有するAML (AML with myelodysplasia-related changes; AML/MRC)
多系統に形態的異形成をもつAML
骨髄異形成症候群(MDS)またはMDS/MPDの既往をもつAML
MDS関連の染色体異常をもつAML

治療関連骨髄性腫瘍
MDS, MDS/MPN, AMLのどの形態であっても、該当の既往があるものはこのカテゴリーに統合されている。
ただしCMLなどの骨髄増殖性疾患の急性転化は、それに対する化学療法の既往があったとしてもこのカテゴリーには入れない。

分類不能の急性骨髄性白血病
特定の遺伝子異常が明らかになっていない、また治療既往や骨髄異形成症候群との関連がはっきりしないAMLがこのカテゴリーになる。
形態学・組織化学・免疫表現型で細分類される(つまりFAB分類と同様)。
未分化型AM
LFAB分類のM0に相当する。
未分化型AM
LFAB分類のM1に相当する。
分化型AML
FAB分類のM2に相当する。
急性骨髄単球性白血病
FAB分類のM4に相当する。
急性単球性白血病
FAB分類のM5に相当する。
急性赤白血病
FAB分類のM6に相当する。
急激な転帰をとる事が多く、予後は悪い。
急性巨核芽球性白血病
FAB分類のM7に相当する。
ただしt(1;22)(p13;q13)を有するもの、およびDown症候群関連白血病は含まない。
予後不良である。
急性好塩基球性白血病
極めて稀な疾患。
このため報告数は少ないが、概して予後不良である。
骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症 (Acute panmyeloidosis with myelofiblosis; APMF)
「MDS関連の染色体異常をもつAML」に合致しない、骨髄の線維化と芽球の増加を伴う急性の骨髄増殖性疾患。
芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍 (Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm; BPDCN)
形質細胞様樹状細胞の前駆細胞が悪性化した疾患。

急性骨髄性白血病の初期症状

初期症状としては、鼻血や歯肉からの出血が止まりにくい、紫斑(青あざ)、点状出血(小出血(毛細血管の破綻)により生じる身体上の赤色ないし紫色の点)ができるなどの易出血症状(歯肉出血、鼻出血、皮下出血など)。血小板減少による症状

風邪だと思っていたがなかなか熱が下がらないなどの感染症。白血球減少による
全身倦怠感・息切れ、動悸、めまいなどの赤血球減少に伴う貧血症状などがあります。
また、健康診断で数値異常を指摘され、発見される場合もまれにあります。

早期発見すれば当然症状も軽度であり、診断までの期間が遅れるほど白血病細胞は増加して初期症状の強さがまし、歯肉の腫脹、脾臓、肝臓やリンパ節などに浸潤して臓器腫大をきたしたりします。

急性骨髄性白血病の診断

前述の初期症状が出る段階になれば血液検査にて貧血、血小板減少が認められ、病院における標準的な血液検査さえ行えば健康人の末梢血では見られないはずの芽球が出現している事が多く、血液中に芽球が出現していれば専門医でなくとも白血病を疑うのはさほど難しくはありません。

ただし、血液中に芽球が出現する疾患、あるいは骨髄で芽球が正常より増える疾患は急性骨髄性白血病だけではありません。
したがって2008年WHO分類では骨髄中の芽球の割合が20%以上と定義しているのです。

急性骨髄性白血病は、症状がでる段階まで進んでいると、すでに体内の白血病細胞の総数は膨大なものになっていますので、血液内科専門医を緊急に受診する必要があります。
血液専門医は白血病が疑われる場合、すぐに骨髄検査および遺伝子検査などを行い、診断を確定します。

急性骨髄性白血病の治療をはじめるにあたり

急性骨髄性白血病の治療は、医師の協力の下で治療方針、治療期間、メリット・デメリットなどの説明を十分にうけ、患者さんが自分の価値観などを考慮し 最終的な治療方法を患者さんが主体となって決定する時代になりつつあります。

急性骨髄性白血病の治療をはじめるにあたり「がん(癌)治療の知識と情報」に詳しくまとめましたので参考にしてください。
また医療の進歩とともに治療方法も多様化してきており、 医師によって治療方法が異なる事は珍しくなく、主治医以外の医師の意見を聞くセカンドオピニオンを求める事が必要な時代になってきました。

詳しくは「インフォームドコンセント」と「セカンドオピニオン」をご覧下さい。

がん治療の知識と情報の「がん治療法を選択するに際してのアドバイス」を是非参照ください。

急性骨髄性白血病のがん治療

治療は抗がん剤を用いた強力な化学療法が主体となります。
このため抗がん剤の臓器毒性や合併症に耐えられるかを、年齢、全身状態(PS)、合併症の有無などから評価して治療内容を決定します。

治療は寛解導入療法と寛解後療法からなります。
全身に存在する白血病細胞を化学療法で減少させ、顕微鏡検査で白血病細胞が認められない状態(これを寛解という)に到達させるのが寛解導入療法です。
しかしこの段階では白血病細胞は残存している(これを微小残存病変(minimal residual disease:MRD)という)ので、さらに化学療法を行い残存している白血病細胞の全滅(Total cell killと呼ばれる)をはかります。
これが寛解後療法です。

実際には寛解後療法はある一定以上を継続しても再発率はそれ以上減少する事はなく、治療に伴う有害事象の方が大きくなりますので、寛解後療法の回数は4回までとなります。

完全寛解の状態が5年続けば再発の可能性は低く治癒とみなしてよいとされています。
尚、急性骨髄性白血病では有用な維持療法は、示されていません。

急性骨髄性白血病の抗がん剤治療は、病型が多い為血液内科の「がん薬物療法専門医」と相談をし、治療選択を決められる事をお勧めいたします。

医療機関の選択の目安としては骨髄移植(造血幹細胞移植)の実施例の多い病院、あるいはJALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)標準に基づく治療を行っているという病院をお勧めします。

JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)のホームページを見られる事をお勧めします。

造血幹細胞移植

致死量をはるかに超えた大量の抗がん剤と放射線によって白血病幹細胞を含めて病的細胞を一気に根こそぎ死滅させる事(前処置)を目指します。
しかし、この強力な治療によって正常な造血細胞も死滅してしまいます。
それでは、患者は造血能力を完全に失い、そのままでは患者は確実に死亡してしまいます。
そのためにHLA型の一致した健康人の正常な造血幹細胞を移植して健康な造血システムを再建してやる必要があるのです。

しかしこの方法(通常移植の前処置)はあまりに強力なため、体力の乏しい患者や高齢者は治療に耐えられません。
そのためミニ移植という治療法もあります。
ミニ移植では、前処置の抗がん剤投与や放射線治療はあまり強力にはしません。
その為に白血病幹細胞は一部が生き残る可能性は高いのですが、移植した正常な造血システムによる免疫によって残った白血病幹細胞が根絶される事を期待する治療法です。

ただし、ミニ移植でもかなり強力な治療には違いないので、すべての患者が適応になるわけではありません。

急性リンパ性白血病(ALL)とは

リンパ球系の細胞(T細胞、B細胞、NK細胞)が腫瘍化し、分化・成熟能を失う疾患でのうち、骨髄に腫瘍細胞が浸潤し、末梢血中にも腫瘍細胞が認められるものが急性リンパ性白血病と呼ばれます。
ただし急性リンパ性白血病でも腫瘤を形成する事がある一方、悪性リンパ腫でも白血化という末梢血へのリンパ腫細胞の出現が認められる事があります。

つまり腫瘍化したリンパ球系細胞は白血病にも悪性リンパ腫にもなりうるのであります。
このためWHO分類第3版・第4版では、両者を区別しない事になりました。
しかしながら、「骨髄に腫瘍細胞が浸潤し、末梢血中にも腫瘍細胞が認められる病態は、臨床症状も含め急性白血病としてふるまうため、この病名は使用されています。

急性リンパ性白血病では、フィラデルフィア染色体(Ph)t(9;22)という染色体異常がみられる場合があり、成人患者で多く約4人に1人(15~30%)の割合で見られフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病と呼ばれます。

また、その発症原因の多くは不明で、発症にかかわる危険因子や予防法も明らかではありません。

急性リンパ性白血病(ALL)の初期症状

初期症状としては、鼻血や歯肉からの出血が止まりにくい、紫斑(青あざ)、点状出血(小出血(毛細血管の破綻)により生じる身体上の赤色ないし紫色の点)ができるなどの易出血症状(歯肉出血、鼻出血、皮下出血など)血小板減少による症状

風邪だと思っていたがなかなか熱が下がらないなどの感染症。白血球減少による
全身倦怠感・息切れ、動悸、めまいなどの赤血球減少に伴う貧血症状などがあります。
また、健康診断で数値異常を指摘され、発見される場合もまれにあります。

早期発見すれば当然症状も軽度であり、診断までの期間が遅れるほど白血病細胞は増加して初期症状の強さがまし、歯肉の腫脹、脾臓、肝臓やリンパ節などに浸潤して臓器腫大をきたしたりします。
以上は、急性骨髄性白血病と同様です。

ALLでは、脳や脊髄などの中枢神経に浸潤しやすい事が知られていて、頭痛や吐き気等の症状が現れる事もあります。
骨髄以外に現れるこれらの病変を、「髄外病変」といいます。白血病細胞が急速に増殖する事によって、骨痛や関節痛が現れる事もあります。

急性リンパ性白血病(ALL)の診断

急性骨髄性白血病の検査と同様の理学的所見、問診、血液検査、骨髄穿刺・生検などを行い、骨髄内の細胞形成状態、芽球の状態によって、確定されます。
また、フィラデルフィア染色体の存在によって治療方針は異なるため、これも治療開始前に確認されます。

急性リンパ性白血病(ALL)の予後(今後の経過)と予後不良因子

小児ALLは80%の長期生存が得られていますが、成人のALLは、60~80%は完全寛解するものの、長期生存率は15~35%と低い。
t(9;22) t(4;11) 染色体陽性患者は、予後不良でしたが、近年フィラデルフィア染色体陽性患者に対しては、従来の4剤併用療法にイマチニブを加える新しい治療法によって予後の改善が見込まれるようになってきました。

予後不良因子
・年齢 30歳以上
・初診時白血球数 30,000/ul 以上
・予後不良染色体異常 t(9;22)、 t(4;11) 、t(1;19)、
・寛解に至るまでの期間 4週間~6週間以上

このほかに9番と22番の染色体間で転座したものや、一部の染色体が欠けたり、失われたもの、数の増減などの染色体異常も、予後不良として報告されています。

急性リンパ性白血病(ALL)の病期

急性リンパ性白血病には病期の区別はありませんが、一般的に下記のように分類されます。

1.未治療(初発)
急性リンパ性白血病に対する寛解導入療法が、まだ行われていない状態。
(抗がん剤治療を一度も行っていない状態)
2. 寛解
全身に存在する白血病細胞を化学療法で減少させ、顕微鏡検査で白血病細胞が認められない状態
3.再発
再発とは、治療によりいったん寛解になった状態から白血病がまた出現する事をいいます。
再発の大部分は骨髄に起こりますが、中枢神経系などの骨髄以外に見られる場合もあります。
4. 不応性
不応性とは、治療によっても寛解にならず、白血病細胞が残存した状態をいいます。

急性リンパ性白血病(ALL)の治療をはじめるにあたり

急性リンパ性白血病の治療は、医師の協力の下で治療方針、治療期間、メリット・デメリットなどの説明を十分にうけ、患者さんが自分の価値観などを考慮し 最終的な治療方法を患者さんが主体となって決定する時代になりつつあります。

急性リンパ性白血病の治療をはじめるにあたり「がん(癌)治療の知識と情報」に詳しくまとめましたので参考にしてください。
また医療の進歩とともに治療方法も多様化してきており、 医師によって治療方法が異なる事は珍しくなく、主治医以外の医師の意見を聞くセカンドオピニオンを求める事が必要な時代になってきました。

特に急性リンパ性白血病(ALL)のように標準治療が確率されていない疾患に対しは、種々の病院で異なった治療法(多くは研究的治療)が行われている場合もあります。
御自身が治療法の選択に迷われているのであれば、多くの情報を得て判断される事が重要です。

フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 (Ph+ALL)に関しては事実上標準的に使用されていた薬が承認された事により予後が大幅に改善されると思われます。
しかし、なお予後不良と診断された場合は、セカンドオピニオンとして他の医療機関の医師の見解も聞くべきです。
地域の癌拠点病院といえども最新の治療ができない場合があるからです。
医療機関の選択の目安としては骨髄移植(造血幹細胞移植)の実施例の多い病院、あるいはJALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)標準に基づく治療を行っているという病院をお勧めします。

JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)のホームページを見られる事をお勧めします。

詳しくは「インフォームドコンセント」と「セカンドオピニオン」をご覧下さい。

がん治療の知識と情報の「がん治療法を選択するに際してのアドバイス」を是非参照ください。

急性リンパ性白血病(ALL)の治療

急性リンパ性白血病(ALL)は、抗がん剤を用いた化学療法が非常によく効きますが、標準治療は確立していません。
急性リンパ性白血病(ALL)の治療は、国内の多くの大学が参加しているJALSG(日本成人白血病研究グループ)が考案した多剤併用化学療法が行われています。

急性リンパ性白血病の場合は、最初の治療により約80%の患者さんが見かけ上治った様な状態(寛解状態)になります。
しかし、この寛解状態でも白血病細胞は体の中に1000万~1億個以上残っており、ここで治療を止めてしまうと、ほとんどの患者さんが再発してしまいます。

化学療法後に骨髄が回復して、ようやく元気になったにもかかわらず、急性リンパ性白血病に対する過酷な治療を何度も繰り返して行なわなければならない(寛解導入療法と寛解後療法とに分けられ、寛解後療法は、さらに地固め療法、中枢神経浸潤予防治療および維持療法から成ります。

寛解導入療法には通常約1ヵ月の治療期間を要し、寛解状態になると、引き続き寛解後療法に移ります。寛解後療法には、残っている白血病細胞をさらに減らして寛解を維持する事と、再発を予防する目的があります)のは、残っている白血病細胞を治療ごとに減らしていき、最終的にすべて死滅させ、完全に治す事(治癒)を目指すためです。(通常は寛解後療法を1~2年行い、治療終了となります)

以上のような治療を行っても半数以上の患者さんが再発し、成人ALLの長期生存率はまだ30~40%とされています。
したがって、成人ALLの治療成績は満足できるものではなく、より有効な治療法の開発を目指して、世界中でさまざまな臨床試験が行われています。

なお、フィラデルフィア染色体(t(9;22))をもつ急性リンパ性白血病(Ph+ALL)には分子標的療法剤のチロシンキナーゼ阻害剤メシル酸イマチニブが効きます。
ただし、イマチニブ単独での治癒は困難です。

◆フィラデルフィア染色体とは:ヒトの細胞の中には46本の染色体があり、1番から22番まで2本ずつある常染色体と、2本の性染色体があります。
慢性骨髄性白血病では、ほとんどの場合で9番染色体と22番染色体が途中で切断され、それぞれ相手方の染色体と結合する異常が認められます。
この異常な染色体をフィラデルフィア染色体と呼んでいます。


フィラデルフィア染色体の名前は1960年代にペンシルベニア州フィラデルフィアの2人の研究者によって発見された事に由来する。(9番染色体と22番染色体)各長腕の転座により、22番染色体上のBCR (breakpoint cluster region) と9番染色体のABL各遺伝子領域が複合し、融合(キメラ)遺伝子BCR-ABLを生じる

この産物である融合タンパクBCR-ABLは、恒常的に活性化されたチロシンキナーゼであり、JAK-STAT系等を介してアポトーシス抑制遺伝子BCL-XLの転写を促進するなど細胞の不死化を引き起こす。さらに、この融合タンパクはDNA修復を禁止するので、ゲノムが不安定となり、細胞は更なる遺伝子的異常を引き起こしやすくなる。
フィラデルフィア染色体が検出される(陽性)細胞が骨髄芽球系(慢性骨髄性白血病)リンパ芽球性(急性リンパ性白血病)かでやや病態が異なり、後者はより難治性とされる。

フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 (Ph+ALL)の治療
Ph+ALLには、通常化学療法が行われ、寛解率は50~80%とされていました。
寛解率は決して悪くはありませんが、長期間寛解を維持できるのは10%前後で、生存期間の中央値は1年弱とされています。

この極めて高い再発率が、Ph+ ALLを予後不良とする最大の原因です。
Ph+ ALLでは、薬剤投与量を増やしてもPh-ALLのような予後改善の期待はできないと考えられています。
このように、Ph+ALLは化学療法だけでは治癒を期待する事が困難なため、治癒を目指した治療法として、積極的に造血幹細胞移植が行われています。
その際、ALLをいかに良好にコントロールするかが良い移植成績につながる重要な要素です。

新しい治療法チロシンキナーゼ阻害剤であるメシル酸イマチニブが登場し、化学療法での成績が著しく改善する可能性が出てきました。
メシル酸イマチニブ単独使用では、20%弱の寛解率は得られたものの、持続期間は2~4ヶ月程度と短いものでした。
メシル酸イマチニブ単独療法は安全ですが、有効性には限界がある事がわかったのです。

そこで、未治療の患者さんにPh+ ALLを対象にした、メシル酸イマチニブ併用化学療法の有効性と安全性を検証する臨床試験中で(JALSG Ph+ALL202試験)、この試験の中間解析の結果では、血液学的寛解率は96%で、以前JALSGで行われたJALSG ALL93試験の51%を大きく上回りました。

しかも、移植を行わずに分子生物学的寛解に達した患者さんが71%も認められました。
これらの結果から、メシル酸イマチニブ併用化学療法のPh+ ALLに対する効果の高さが明らかになり、併用する事によって相乗効果が確認できました。

ただし、最長の観察期間が3年しかない成績であるため、今後の長期的な有効性についてはなお検討が必要です。(2010年現在)
また、寛解早期の同種移植をしなくてよいというわけではない事にも注意が必要です。

中枢神経浸潤の予防
急性リンパ性白血病(ALL)は、高い確率で中枢神経に浸潤する事が知られています。
初回の治療においても中枢神経浸潤の予防は必須とされています。

治療は、点滴での抗がん剤投与と合わせる形で、抗がん剤(メトトレキサート、シタラビンおよびステロイド)の髄腔内投与(腰から細い針を刺して髄液中に抗がん剤を注入する)を行う事が一般的です。

プロトコールによっては、脳への放射線照射や、中枢神経系へ移行する抗がん剤(メトトレキサートやシタラビン)の大量投与なども行われています。

慢性骨髄性白血病(Chronic myelogenous leukemia :CML・慢性顆粒球性白血病)

造血幹細胞の遺伝子が後天的に変異して、造血細胞が分化・成熟能を保ったまま自律的な増殖をし、血液において白血球や時に血小板が増加する血液腫瘍です。
CMLの体内では、あまりに過度の血液幹細胞に顆粒球と呼ばれる白血球のタイプをつくるように伝えるため、骨髄幹細胞のいくつかは成熟白血球となることができません。
これらは白血病細胞とも呼ばれます。

通常、病気の進展に伴い、慢性期、移行期、急性期に分けられます。

慢性骨髄性白血病は、フィラデルフィア(Philadelphia:Ph)染色体という特異的な染色体異常を持ちます。

病期と症状

一般的には慢性期に始まり、数年間をかけて移行期へと移行し、最終的には急性転化期に陥ります。

慢性期:慢性骨髄性白血病患者のおよそ85パーセントが診断時にこの段階です。
この時期の患者は、ほとんど無症状であるか、あっても軽度の疲労感や体重減少、皮膚のかゆみなどのほかに脾腫及び肝腫大による満腹感程度です。

慢性期においては、骨髄及び末梢血中の芽球の割合は10%未満で、原則として幼若な細胞から成熟した細胞まで、すべての段階の白血球が出現するのが特徴です。
また、白血球の一種である好塩基球の増加をしばしば認めます。

移行期:移行期は急性期へ悪化する前段階であり、芽球の増加がみられ、末梢血中または骨髄中の芽球が10%以上20%未満の状態です。

急性期:動悸どうき・息切れ・全身のだるさなどの貧血症状、皮下出血・鼻血・歯肉出血などの出血症状、発熱などの感染症状のほか、関節痛、骨痛などが現れる場合があります。

正常な造血機能が著しく障害されている段階であり、身体症状は急性骨髄性白血病に類似する。末梢血中または骨髄中の芽球は20%以上となり、髄外造血(転移)がみられることもある。
芽球は骨髄球系・リンパ球系のどちらもとりうるが、骨髄球系が多い。

慢性骨髄性白血病の治療

慢性期

第1世代のチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) イマチニブメシル酸塩によっておよそ90%の患者が寛解を得て通常の社会生活を送ることができますが、一部に治療の初期または中途からイマチニブに治療抵抗性となる場合があります。

イマチニブに抵抗性のある慢性骨髄性白血病患者には第2世代のチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) ニロチニブ(ニロチニブ塩酸塩水和物)・ダサチニブ(ダサチニブ水和物)が開発され効果をしめしています。(ただし、数十種類あるBCR-ABLたんぱく質の小変異の内、T315I BCR-ABLと呼ばれるATP結合部位のアミノ酸残基トレオニンがイソロイシンに変異したタイプのものは、イマチニブにも第二世代のTKIにも抵抗性であり、移植治療が推薦される。)

インターフェロン:イマチニブと比較すると効果が得られる確率は劣りますが、インターフェロン療法によりフィラデルフィア染色体陽性の細胞数が減少した症例では、生存期間の延長が報告されています。

造血幹細胞移植:現在のところ、治癒をもたらしうることがわかっている唯一の治療法です。
この治療法を選択するためには、年齢の制限(通常は50~55歳以下)のほか、白血球の型が一致したドナー(骨髄血こつずいけつを提供する人)がいることが必要です。
また、移植に伴う合併症の危険もあることから、その適応は慎重に検討されます。

最近、移植時に行う前処置の治療毒性を軽減した非破壊性造血幹細胞移植も試みられています。

移行期や急性期
移行期や急性期に移行した場合、高用量のイマチニブまたはダサチニブやニロチニブを投与します。なお、ニロチニブは急性転化期の患者さんに使うことはできません。
これらの薬によってよい状態に持ち込み、可能であれば造血幹細胞移植を行うのが標準的な治療法とされています。

あるいはチロシンキナーゼ阻害薬に耐性をもった場合、チロシンキナーゼ阻害薬が最初から効きにくいサブタイプなどの慢性骨髄性白血病に対しは骨髄移植や臍帯血移植などの造血幹細胞移植が重要な治療法となります。

予後

初発慢性期

チロシンキナーゼ阻害薬が登場する以前の治療では初発慢性期であっても10年生存率は約25%に過ぎませんでしたが、イマチニブの登場により8年での全生存率は85%と、血液悪性疾患の中では驚異的な成績を見せています。
イマチニブ不耐用・抵抗性の初発慢性期に対する第2世代チロシンキナーゼの成績は、ニロチニブで4年の全生存率78%、ダサチニブで3年の全生存率87%です。
しかしT315I変異を有する例では、依然としてチロシンキナーゼ阻害薬登場以前と同程度の予後です。

移行期・急性期
慢性期にはきわめて有効であったイマチニブも、移行期においての4年生存率は、45%まで低下します。
一方、第2世代チロシンキナーゼの成績は、ニロチニブで1年の全生存率は79%、ダサチニブで3年の全生存率は82%です。
ただし同期間の無増悪生存率は低く(73%と66%)、生存曲線も平坦化していない。

急性期においては、イマチニブ単独での1年全生存率は22%しかありません。
ニロチニブで20%前後の寛解を得たと報告されています(生存率は記載なし)が、ニロチニブは日本では急性期に対する使用はできません。
ダサチニブは適応がありますが、単剤での全生存中央値は骨髄球系で11.8か月、リンパ球系で5.3か月です。

慢性リンパ性白血病

小型で細胞質が乏しい成熟Bリンパ球性の慢性白血病です。
白血球細胞は骨髄、リンパ節、末梢血で増加します。

白血病細胞が主にリンパ節で増殖する場合には小リンパ球性リンパ腫(Small lymphocytic lymphoma; SLL)と呼ばれますが、CLLとSLLは本質的には同一の疾患で、そのため現在、CLLとSLLはあえて分けず慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)として単一の疾患として論じられ、WHO分類ではリンパ増殖性疾患に分類されます。

進行は遅いことが多く、患者によっては無治療のまま天寿を迎えることもありますが、病期が進んでくると貧血や血小板減少、日和見感染や自己免疫疾患をおこすことがあります。高齢者および男性に多い疾患で人種的には欧米で多く、アジアでは稀な疾患です。

半数以上の患者には自覚症状はなく、健康診断やなにかのきっかけでの血液検査で白血球増加を指摘されて受診し見つかることが多いく、初診時症状がある場合は、倦怠感、体重減少、盗汗(寝汗)が多く、他にはリンパ節腫脹、発熱、肝脾腫、皮疹、易感染症などがあります。
病気が進行してくるとリンパ節腫脹や脾腫が拡大し、貧血や血小板減少が現われ、自己免疫性疾患や日和見感染も併発しやすくなります。

慢性リンパ性白血病は進行が緩慢で、無治療でも長期生存が可能な患者も少なくありません。
病期分類によって治療手段が違い、リンパ球の増加のみで症状がなく安定している場合は治療によって生命予後が改善されるとは限りません。

症状が無い時やリンパ球数や赤血球・血小板などの数字が安定しているときには必ずしも治療を開始した方が期待できる生存期間が延びるとは限りません。
その為にNational Cancer Insititute-sponcered Working Groupのガイドラインによれば(1)6ヶ月以内に10%以上の体重減少、強い倦怠感、盗汗、発熱などの症状
(2)貧血や血小板減少
(3)著しい脾腫、リンパ節腫大(4)リンパ球数が2ヶ月の間に50%あるいは6ヶ月で2倍の増加、以上の
(1)-(4)のどれかが認められた場合に治療を開始するとされています。

治療は、フルダラビン単剤、もしくはフルダラビンとシクロフォスファミドの併用が標準であり、リツキシマブの併用も有効性が認められています。
ただし、治癒は望めず治療の目的は病勢のコントロールと生存期間の延長を図ることであります。
2013年3月25日、抗CD20抗体オファツムマブが「再発又は難治性のCD20陽性の慢性リンパ性白血病」に対して日本での製造承認を取得しました。

骨髄異型性症候群

骨髄異型性症候群とは、造血幹細胞の遺伝子や染色体がわずかに異常を起こし、きわめてゆっくりと血液成分全体に異常が起きて、白血球、赤血球、血小板のどの血球も減ってしまう病気です。

骨髄異型性症候群は60歳以上の高齢者に多い病気で、患者さんのうち20%程度が急性白血病に転化するため「前白血病状態」と呼ばれる事もあります。

白血病化した芽球の割合が20%以上であれば急性白血病、それ以下であれば骨髄異型性症候群に区別されます。

  □骨髄異形成症候群の症状

骨髄異型性症候群では正常な血液細胞が造られないためにさまざまな症状がでるようになります。
正常な白血球は細菌やウイルスが体内に侵入した際にそれを排除する免疫の役割をもつ細胞です。
骨髄異型性症候群のために白血球が減少する事で感染症にかかり易くなったり、原因不明の発熱が起こる事があります。

正常な赤血球は全身に酸素を運ぶ働きをします。
そのため骨髄異型性症候群になると赤血球の減少により、動悸、息切れ、全身の倦怠感、顔面蒼白などの貧血症状が現れます。

血小板は出血を止める機能を持っています。
骨髄異型性症候群のために血小板が減少すると歯茎や鼻から出血したり、出血斑ができたり、青あざができやすくなります。

骨髄異型性症候群の分類

不応性貧血(RA)
鉄芽球性不応性貧血(RARS)
多血球系異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)
多血球異形成を伴う鉄芽球性不応性貧血(RCMD-RS)
芽球増加型不応性貧血(RAEB)
5q-症候群
分類不能型骨髄異形成症候群

骨髄異型性症候群の治療

基本的に対症療法が中心となります。
好中球減少例には顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与を、赤血球減少例にはエリスロポエチン(EPO)の投与を行い、それぞれ極端な減少例には輸血療法で対処としていきます。

重症例に対しては根治療法として、造血幹細胞移植を行う。
異常クローンを根絶し、正常造血を回復させるのが目的です。
現在移植の適応は50~55歳以下に限られている。

抗癌剤治療(急性骨髄性白血病に準ずる)
免疫抑制療法
ビタミン療法(ビタミンKおよびビタミンD投与)
輸血などの支持療法

予後

予後不良です。
予後良好の不応性貧血で生存年数は約5年、
予後不良のタイプでは1年程度です。
骨髄移植実施例での長期生存率は不応性貧血では40~60%、RAEBでは20~30%程度です。

白血病治療に不安や行き詰まりを感じたり、化学療法(抗がん剤治療)の副作用の軽減、全身状態の改善、QOL(生活の質)の向上、延命、治癒を目指す白血病の治療法を検討されている方。
西洋医学との併用、あるいは西洋医学以外のアプローチ方法もございますので、白血病治療無料相談よりお問い合わせ下さい。