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甲状腺(乳頭・濾胞・髄様・未分化)がん・甲状腺癌治療の知識と情報

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甲状腺(乳頭・濾胞・髄様・未分化)がん・甲状腺癌治療の知識と情報

甲状腺(乳頭・濾胞・髄様・未分化)がん・甲状腺癌における漢方医学療法

漢方医学療法研究会は漢方医学療法が、がん闘病者の治療の福音になればと研究を重ねてきました。
漢方医学療法の作用の一部を闘病者の声として頂いており、声の中から重要度の高い項目に関しての資料をご用意しました。
当研究会の研究成果や実績については「漢方医学療法のがん治療研究における成果」をご覧ください。

□医療相談

甲状腺がん(甲状腺癌)の治療を行いながらQOL(生活の質)を維持・向上しつつ延命そして治癒を目指していくためには、患者さん及びご家族の方々も甲状腺がん(甲状腺癌)についての情報を正しく知っておく必要があります。

甲状腺がん(甲状腺癌)の進行と共にどのような症状が現れるのか、甲状腺がん(甲状腺癌)の治療にはどのような方法があるのか、甲状腺がん(甲状腺癌)の治療に用いる抗がん剤の種類など甲状腺がん(甲状腺癌)の情報を整理しました。

一般の方にもご理解いただけますようにできるだけわかり易く甲状腺がん(甲状腺癌)について説明をしておりますので、是非ご一読いただきたき甲状腺がん(甲状腺癌)治療の一助にしていただければ幸いです。
お問い合わせをお考えの方はまず「漢方医学療法を始めるにあたって」をご覧ください。

甲状腺がん(甲状腺癌)の治療に不安や限界を感じていらっしゃる方は、西洋医学との併用あるいは西洋医学以外のアプローチ方法もございますので甲状腺がん(甲状腺癌)治療の無料相談よりお問い合わせ下さい。

がんの治療を行う際には患者不在の治療にならないよう注意が必要です。そのためにも「がん(癌)治療の知識と情報」をご一読いただければと思います。

□甲状腺がん(甲状腺癌)とは

甲状腺は頸部(首)の正面、喉頭(のどぼとけ)の下に続く気管を取り巻くように位置します。蝶が羽を広げたような形でサイロキシンという細胞の新陳代謝に関与するホルモンを分泌しています。

甲状腺からは、男女に関わらず一定量のホルモンが分泌されていますが、これが過剰になったり、不足すると体調が悪くなります。
脳の下垂体から出る甲状腺刺激ホルモンが甲状腺ホルモンの分泌を調整しています。

甲状腺ホルモンには次のような機能があります。
・心拍数、体温や食べ物をエネルギーに変換する(代謝)速さをコントロールします。
・血液中のカルシウム量をコントロールします。

甲状腺に生ずる悪性腫瘍のうち上皮由来のものを甲状腺がんと言います。
甲状腺がんには、「乳頭がん」、「濾胞がん」、「髄様がん」、「未分化がん」の4つのタイプがあり、それぞれのがんで性質が異なります。

【甲状腺乳頭がん】
頻度は80%と、甲状腺癌のなかでは最多です。
女性に多くみられ、好発年齢は30-50歳代です。
腫瘍の成長は遅く、特に微小な腫瘍は倍加するのに数年を要する場合もあります。
主にリンパ行性の転移を示し、初診時に既にリンパ節転移を起こしているケースもありますが、成長が遅いため、予後はそれほど悪くありません。
浸潤傾向は強くありませんが、進行すると反回神経麻痺や、食道浸潤による嚥下困難を来たすこともあります。

若年の発症が多いにも関わらず、早期治療を行えば予後は極めて良好で、10年生存率は80%以上とされており、小さい腫瘍であった場合は95%以上の術後30年生存率の報告があります。

治療の第一選択は手術ですが、予後良好であることから、術後のQOL(生活の質)を勘案すると、「どこまで摘出範囲を広げるべきか」という点については十分に検討されるべきでしょう。
また、時に放射線外照射、放射性ヨード治療、TSH抑制療法なども行われます。

なお、近年、1センチ以下の小さな乳頭癌は症例を選べば手術をせずに定期的に経過をみるだけで十分であるという研究報告がなされています。
しかし、どんな症例にも適応できるわけではなく、それを行っている施設は限られているのが現状です。

【甲状腺濾胞がん】
頻度は10~15%と、乳頭がん同様に女性に多い。
好発年齢はやや高く、40~60歳代です。
血行性転移を示し、肺などへの遠隔転移が多く見られます。
このために予後は乳頭癌と比較して不良ですが、進行は乳頭がん同様に遅いので、10年生存率は50%を超えています。

良性腫瘍である濾胞腺腫と濾胞がんとの鑑別は、かなり進展した場合を除いて困難です。
穿刺吸引細胞診での鑑別も困難で、画像上、あるいは臨床的に濾胞がんを疑う場合は、そうと診断されなくとも手術を施行するのが一般的です。

濾胞がんを疑って手術をする場合は、単発であれば一般的には甲状腺の片葉切除のみにとどめ、リンパ節郭清は行わない事が多い。
濾胞がんは乳頭がんと異なり、濾胞がんがリンパ節転移を起こす頻度は非常に低いためです。

【甲状腺髄様がん】
頻度は1~2%と乳頭がん同様に女性に多い。
好発年齢は30-50歳代です。
髄様がんは、他の甲状腺がんとはことなり、カルシトニンというカルシウムの代謝に関わるホルモンを分泌する甲状腺傍濾胞細胞ががん化して起こります。

半数近くが遺伝的体質によるもので、その場合には同時に副腎の褐色細胞腫や副甲状腺の過形成などの病気を合併することがあります。
悪性度は乳頭がんや濾胞がんと比べると悪くなりますが、未分化がんよりは良いとされています。

他の家族(両親、子供、孫、兄弟姉妹、姪や甥、おじ、おば)などに同様の患者がいる場合には、あらかじめ遺伝子検査をして、常染色体優性遺伝が発見された場合には、あらかじめ甲状腺の摘出を行うことでがんになる確率を抑えることができます。

髄様がんは、リンパ節への転移があると予後は悪くなり、肺や肝臓への転移がある場合には治療は難しくなり、5年生存率は7割程度とされています。
早期発見すれば、治療の第一選択は手術。
放射性ヨード治療やTSH抑制療法は効果がありません。

【甲状腺未分化がん】
頻度は3~5%と乳頭がん同様に女性に多い。
好発年齢はさらに高く、60歳代以上です。
乳頭癌または濾胞癌が転化したものと考えられているが、すべての悪性腫瘍の中でもっとも予後不良とされており、どんな治療を行なっても1年以上の生存は稀です。

27時間で腫瘍細胞が倍加する可能性があるという報告もあり、急速に増大する頸部腫大を訴えることが多く、急激に周囲へ浸潤することから、頚部の圧迫感、疼痛、熱感を覚え、皮膚発赤、嗄声、呼吸困難、嚥下困難などを来たすこともあります。
発熱や体重減少などの全身症状もしばしば出現します。

早期発見できたものは、抗癌剤、手術、放射線外照射を組み合わせた複合治療を行いますが、腫瘍の増大が早いため早期発見できず緩和治療に移る場合が多い。
放射性ヨード治療、TSH抑制療法は効果がありません。

□甲状腺がん(甲状腺癌)の発がんリスク因子と症状

病気を発症する危険を高めるものをリスク因子と呼びます。
リスク因子があるからといって、がんになるとは限りません。
また、リスク因子がないからといって、将来がんにならないわけではありません。

甲状腺がんには次のようなリスク因子があります。
・年齢が25~65歳である。
・女性である。
・幼少期に頭頸部への放射線療法の治療歴があるか、原爆被爆の経験がある。
この場合、早ければ曝露から5年後にがんが出現することがあります。
・甲状腺腫(甲状腺肥大)の既往がある。
・甲状腺疾患または甲状腺がんの家族歴がある。
・家族性甲状腺髄様がん(FMTC)、多発性内分泌腺腫瘍症候群2A型、多発性内分泌腺腫瘍症候群2B型などある種の遺伝的状況を有する。

甲状腺がんでは初期症状が認められず、時に日常診療中に発見されることがあります。
腫瘍が大きくなるとともに頸部のしこり、嗄声(させい)やのどの痛み、呼吸困難、嚥下障害などの
症状が出現することがありますが、他の状況によっても同じ症状がみられることがあります。

□甲状腺がん(甲状腺癌)の検診と診断

全身を調べて、頸部、喉頭、リンパ節のしこりや脹れ、また何か異常にみえるものなど疾患徴候を含めた一般的健康状態をチェックします。
また患者さんのこれまでの生活習慣や過去の疾患および治療の病歴についても調べます。

鏡または喉頭鏡を用いて喉頭(発生器)を医師が観察する手法です。
喉頭鏡は観察するためのライトとレンズの付いた細いチューブ型装置です。
甲状腺がんが声帯を圧迫することがあります。
喉頭鏡検査は声帯が正常に動くかどうかを調べるために行われます。

血液検査:身体中の器官、組織によって血液中に放出されるある種のホルモン量を測定するために血液サンプルを調べる方法です。
ある物質の量が異常(正常値よりも高値か低値)である場合、それをつくる器官、組織における疾患の徴候である可能性があります。
甲状腺刺激ホルモン(TSH) 値が異常でないかどうか血液を調べることがあります。
TSHは脳内の下垂体により作られ、甲状腺ホルモンを刺激し、甲状腺濾胞細胞が成長する速度をコントロールします。
カルシトニンというホルモンおよび抗甲状腺抗体が高値かどうか血液を調べることもあります。
血液中に放出されるカルシウムなどある種の物質の量を測定することもあります。

超音波検査:甲状腺腫の位置、内部構造や被膜、石灰化像、リンパ節転移の有無など非常に多くの情報が得られ、甲状腺癌の検査としてきわめて重要なものです。
痛みを伴わず、簡便で無侵襲であり、安全な検査です。

シンチグラフィ:放射性ヨードやテクネチウムという放射性物質を注射し、腫瘍に集まった様子を専用のカメラで写す。
腫瘍の位置や転移の有無などの情報を得ることが出来る。
しかし必ずしも感度はよいとは言えない。

穿刺吸引細胞診:甲状腺腫が良性か悪性かを鑑別するのに重要です。
注射針で甲状腺を刺し、陰圧をかけて細胞を採取し、顕微鏡で判定する方法が一般的。
乳頭癌についてはかなりの確率で診断を確定できます。
濾胞癌については、良性の濾胞腺腫と細胞の形は同じであるため、診断は困難である。
また、髄様癌は典型的なアミロイドがあれば診断は可能であるが、熟練したcytologistや
病理学者が検鏡しない場合、しばしば診断を誤ることがあります。

腫瘍マーカー:具体的には血清サイログロブリン値を指す。
診断よりもむしろ手術(全摘)後の再発マーカーとして重要。
これがコンスタントに上昇してきた場合は、再発を疑わなくてはならない。

がん治療の知識と情報の「がん診断と病期(ステージ)診断に行われる検査の種類と内容」参照

□病期診断

甲状腺乳頭がん・甲状腺濾胞がん

(45歳未満の患者)
Ⅰ期:腫瘍の大きさに関わらずがんが甲状腺内に限局しているか、または甲状腺に隣接する組織、リンパ節まで拡がっている。
がんは身体の他の部分まで拡がっていない。

Ⅱ期:腫瘍の大きさはさまざまで、がんは甲状腺から肺や骨など身体の他の部分にまで拡がっている。

(45歳以上)
Ⅰ期:がんは甲状腺内にのみ限局しており、大きさは2cm未満です。

Ⅱ期:がんは甲状腺内にのみ限局しており、大きさは2cm以上、4cm未満です。

Ⅲ期:以下のいずれかが認められます。
・腫瘍の大きさが4cm以上で甲状腺内にのみ限局しているか、または腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっているが、リンパ節までは拡がっていない。
・腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっており、さらに気管または喉頭(発声器)付近のリンパ節まで拡がっている。

Ⅳ期: ⅣA期、ⅣB期、ⅣC期に分けられます。
ⅣA期 以下のいずれかが認められます。
・腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺の外側に拡がっており、皮膚、気管、食道、喉頭(発生器)および/または反回喉頭神経(喉頭に続く2つの分枝からなる神経)下の組織まで拡がっているか、がんはリンパ節まで拡がっている。
・腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっている。
・がんは頸部または肺の間の片側または両側リンパ節まで拡がっている。
ⅣB期ではがんは脊柱前部の組織または頸動脈周囲、肺の間の領域中の血管まで拡がっている。
がんはリンパ節まで拡がっているかもしれません。
ⅣC期では腫瘍の大きさはさまざまで、がんは肺、骨など身体の他の部分まで拡がっていて、そしてリンパ節まで拡がっているかもしれません。

甲状腺髄様がん

0期:特殊なスクリーニング検査でのみ発見され、腫瘍は甲状腺内に認められないことがあります。

Ⅰ期:甲状腺内にのみ限局しており、大きさは2cm未満です。

Ⅱ期:以下のいずれかが認められます。
・ 腫瘍の大きさが2cm以で、甲状腺内に限局しています。
または腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっているが、
リンパ節までは拡がっていません。

Ⅲ期:腫瘍の大きさに関わらず、気管および喉頭(発声器)付近のリンパ節まで拡がっており、
甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっていることがあります。

Ⅳ期:Ⅳ期の甲状腺髄様がんはⅣA期、ⅣB期、ⅣC期に分けられます。
ⅣA期 以下のいずれかが認められます。
・腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺の外側に拡がっており、皮膚、気管、食道、喉頭(発生器)および/または反回喉頭神経(喉頭に続く2つの分枝からなる神経)下の組織まで拡がっているか、がんは気管または喉頭付近のリンパ節まで拡がっている。
あるいは、腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっているかもしれません。 がんは頸部または肺の間の片側または両側リンパ節まで拡がっている。
ⅣB期では、がんは脊柱前部の組織または頸動脈周囲、肺の間の領域中の血管まで拡がっています。 がんはリンパ節まで拡がっていることがあります。
ⅣC期では、腫瘍の大きさに関わらず、がんは肺、骨など身体の他の部分まで
広がっており、リンパ節まで拡がっていることがあります。

甲状腺未分がん
非常に進行が早く、通常、発見された時点で頸部内まで拡がっています。
IV期の甲状腺未分化がんはIVA期、IVB期、IVC期に分けられます。
ⅣA期ではがんは甲状腺内に認められ、さらにリンパ節まで拡がっていることがあります。
ⅣB期ではがんは甲状腺の外側に拡がっており、リンパ節まで拡がっていることがあります。
ⅣC期ではがんは肺、骨など身体の他の部分まで拡がっており、リンパ節まで拡がっていることがあります。

□甲状腺がん(甲状腺癌)の転移

分化がんは非常におとなしいがんであり、穏やかな経過をたどりますが、放置すれば、原発巣はやがて甲状腺外へ発育し、筋層、気管、食道、反回神経(声を出す神経)などへ浸潤するし、転移は反対側の腺葉へ、また同側の頸部リンパ節あるいは反対側の頸部リンパ節へ、さらには血行性に肺や骨へ拡がります。

□甲状腺がん(甲状腺癌)の治療をはじめるにあたり

甲状腺がん(甲状腺癌)の治療は、医師の協力の下で治療方針、治療期間、メリット・デメリットなどの説明を十分にうけ、患者さんが自分の価値観などを考慮し 最終的な治療方法を患者さんが主体となって決定する時代になりつつあります。

甲状腺がん(甲状腺癌)の治療をはじめるにあたり「がん(癌)治療の知識と情報」にまとめましたので参考にしてください。

また医療の進歩とともに治療方法も多様化してきており、 医師によって治療方法が異なることは珍しくなく、主治医以外の医師の意見を聞くセカンドオピニオンを求めることが必要な時代になってきました。

詳しくは「インフォームドコンセント」と「セカンドオピニオン」をご覧下さい。

がん治療の知識と情報の「がん治療法を選択するに際してのアドバイス」を是非参照ください

□甲状腺がん(甲状腺癌)の治療


基本的に摘出術を行うが、1cm以下で症状のない微小乳頭癌では経過観察することもあります。
再発予防のためリンパ節廓清や放射性ヨード投与を行います。
甲状腺を全摘した場合は一生甲状腺ホルモンを投与し続ける必要があります。
甲状腺ホルモンを過量に投与して甲状腺刺激ホルモンを抑制し、再発を防止するTSH抑制療法を採用する場合もあります。

【経過観察】
乳頭癌は基本的に成長が遅く、長年にわたってほとんど進行しない例もあります。
そのため、1cm以下の微小な乳頭癌の場合に限り、直ちに手術を行わず、経過観察をする場合があります。
腫瘍が増大したり、新たにリンパ節転移が生じてきた場合には、手術を施行します。
この様な加療に関しては、患者に対する周到なインフォームドコンセントが必要です。

【手術療法】
乳頭癌に関して、全例甲状腺を全摘するべきだする意見と、小さい癌では部分切除で充分だとする意見が対立しています。
日本・ヨーロッパでは部分切除派(片葉切除、すなわち甲状腺の癌が存在する側のみを切除すること)が多く、アメリカでは全摘派が多い。

近年部分切除派がアメリカでも影響を広めています。
患者の追跡データによって小さい乳頭癌では部分切除も全摘も生存率に差がないことが指摘されたためです。

また、リンパ節転移が多いため手術時に附属リンパ節を予防的に切除するべきだとする意見とその必要はないとする意見の対立があります。
日本・ヨーロッパではリンパ節切除を推奨する専門家が多く、アメリカでは甲状腺全摘と強力な放射性ヨード治療を組み合わせればリンパ節の予防的切除は不要であるとする意見が根強い。

【放射性ヨウ素療法】
放射線療法は高エネルギーX線やその他の種類の放射線を用いてがん細胞を殺すかまたは成長させないでおくがん治療のことです。

放射線療法には2つの種類があります。
外照射は体外の機械を用いてがんに放射線を照射する治療法です。
腔内照射は放射性物質を密封した針、シーズ、ワイヤ、カテーテルをがんの内部またはその近くに直接留置して、がんに放射線を照射する治療法です。
放射線療法の方法は治療されているがんの種類や病期によって異なります。

摘出できなかったすべての甲状腺がん細胞を殺すために手術後に放射線療法を行うことがあります。
甲状腺濾胞がん、甲状腺乳頭がんでは時に放射性ヨウ素(RAI)療法による治療が行われることがあります。
口から飲み込まれたRAIは、身体の他の部分にまで拡がっている甲状腺がん細胞を含めて残存する全ての甲状腺組織に集積します。

ヨウ素は甲状腺のみに取り込まれるため、RAIは他の組織に害を及ぼすことなく甲状腺組織、甲状腺がん細胞を破壊します。
RAIの完全治療用量を投与する前にヨウ素が腫瘍に取り込まれるかどうかを確認するため、少量の試験用量が投与されることがあります。

【TSH抑制療法・ホルモン療法】
甲状腺ホルモンが不足すると下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、甲状腺にもっと働くように信号を送ります。
逆に甲状腺ホルモンが過剰な時はTSHは分泌されず、甲状腺は刺激を受けません。
TSHが大量に分泌されると乳頭癌や濾胞癌は腫瘍の成長が早まることが知られています。

このため、甲状腺ホルモンを過量に投与し、TSHを抑制することによって甲状腺癌の成長を抑制する治療方法があります。
既に切除出来ない転移が証明されている場合、転移の成長を抑制するのに有効です。
アメリカでは、転移が証明されていなくても、すべての甲状腺癌患者に予防的にTSH抑制療法を採用するべきだという意見が根強い。

ただし、すべての甲状腺癌に等しく有効であるわけではなく、骨粗鬆症のリスクもあるため、早期手術できた例や予防的リンパ節切除を行った例では、転移が証明されるまでは、必ずしも必要ではないと考える専門家もいます。

【化学療法】
抗癌剤を使用する化学療法は、一般に健康な組織に近い腫瘍には効果が低く、健康な組織に遠い腫瘍には効果が高い。悪性度の低い乳頭癌や濾胞癌は、比較的健康な組織に近く、抗癌剤の効果は低い。未分化癌は逆に悪性度が強すぎて抗癌剤の効果が低い。

【集学的治療】
抗癌剤・手術・放射線などを組み合わせた複合型の治療を集学的治療といいます。
甲状腺未分化癌などの非常に悪性度の高い癌に利用されます。
一部の専門施設では、さらに分子標的治療薬やHDAC阻害剤を加えて未分化癌に対して一定の成果を上げていと言う報告があります。
また、少量の抗癌剤を毎週投与するウィークリー療法や、腫瘍を栄養する血管にチューブを埋め込み、高濃度の抗癌剤を局所投与する方法で未分化癌に良好な延命効果を報告している専門家もいます。

□甲状腺がん(甲状腺癌)の予後(治癒の可能性)

甲状腺癌は、予後の良好な悪性腫瘍として知られており、腫瘍の発育速度も遅い。
10年生存率は一般的に乳頭癌が85%、濾胞癌が65~80%、髄様癌が65~75%です。
しかし未分化癌は極めて予後が悪く、ヒトに発生する癌の中でも悪性度の高い癌の1つです。
進行速度が非常に速く、手術や放射線、化学療法を行ってもほとんどが1年以内に死亡します。
一方、予後のもっとも良い甲状腺乳頭癌は手術から再発までの期間がながいため、術後長期にわたって経過観察を要します。

□癌(がん)の何が生命を脅かすのか

癌(がん)関連遺伝子(癌遺伝子と癌抑制遺伝子)という遺伝子群の遺伝子の変異(2個~10個)が遺伝子産物(変異タンパク質)を産生します。

遺伝子産物(変異タンパク質)は生体の生命維持に重大な支障を与え、全身状態(PS)の低下、多臓器不全や身体の衰弱を招きます。
遺伝子産物(変異タンパク質)こそ癌(がん)が生命を脅かす元なのです。

□がん細胞が産生する遺伝子産物(変異タンパク質)の生体に対する影響

がん化した細胞の種類や発生した部位により産生される物質も異なり、がんの病態や悪性度が規定されます。

また、同じ腫瘍内にあるがん細胞でも、クローン増殖(転写)するがん細胞の増殖スピードが早く、悪性度が高い、そして同じ腫瘍内に多くのクローンが混在していると考えられます。
抗癌剤等の薬剤治療により、クローンが死滅しても別のクローンが特別な物質(薬剤耐久性遺伝子産物(薬剤治療が効かなくなる))を産生し、薬剤や免疫(免疫回避機構)に依る治療等からすり抜ける術を獲得します。

がん細胞が産生する遺伝子産物(変異タンパク質)は細胞内に産生される物質と細胞外へ産生される物質があり、細胞内にはシグナル伝達関連タンパク質、細胞外には増殖因子、癌胎児性タンパク質(CEA、AFP)、酵素、ホルモン、サイトカイン等です。

この様な事に依り、がん細胞が無知秩序で抑制不能な細胞増殖や転移、がん細胞のアポトーシス抑制(がん細胞の不死化)やがん周囲の血管新生等の能力を獲得します。

生体に対しては、全身の代謝異常、消化器機能障害、播種性血管内凝固症候群(DIC)、炎症誘導、発熱、悪液質(食欲低下、体重減少)、高カルシウム血症等、腫瘍随伴症候群と呼ばれる癌(がん)が産生した物質が血流に入って体内を循環する事で起こる症候群、特に病期(ステージ)の進んだ末期癌に多く見られます。

□癌(がん)を克服するには次の様なことが行われなければなりません

「抗炎症」「変異物質の抑制」「免疫細胞の活性」「癌細胞の死滅」「血液の改善」「クローン阻止」「活性酸素の消去」「代謝異常の改善」等を総合的に行わなければ癌(がん)克服の道筋は見えないのです。

漢方医学療法は、これら問題に対し学術的に裏付けられる療法なのです。
漢方医学療法に関心がある方は甲状腺がん(甲状腺癌)治療の無料相談よりお問い合わせ下さい。