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大腸がん・大腸癌治療の知識と情報

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大腸がん・大腸癌における漢方医学療法

漢方医学療法研究会は漢方医学療法が、がん闘病者の治療の福音になればと研究を重ねてきました。
漢方医学療法の作用の一部を闘病者の声として頂いており、声の中から重要度の高い項目に関しての資料をご用意しました。
当研究会の研究成果や実績については「漢方医学療法のがん治療研究における成果」をご覧ください。

□医療相談

大腸がん(大腸癌)ステージの進んだ3期、4期(末期)の大腸がん(大腸癌)では次の様な転移や症状が見られます。
局所再発、リンパ節転移、肺転移、肝臓転移、腹膜転移、骨転移、脳転移、副腎転移、脾臓転移、腸閉塞、腹膜播種、癌性腹膜炎、腹水、むくみ、体力の低下、衰弱、痛みなど。

大腸がん(大腸癌)治療に不安や行き詰まりを感じたり、化学療法(抗がん剤治療)の副作用の軽減、QOL(生活の質)の向上、延命、治癒を目指す大腸がん(大腸癌)の治療法を検討されている方。
お問い合わせをお考えの方はまず「漢方医学療法を始めるにあたって」をご覧ください。

西洋医学との併用、あるいは西洋医学以外のアプローチ方法もございますので、大腸がん(大腸癌)治療無料相談よりお問合せ下さい。

□大腸がん(大腸癌)とその症状

大腸は身体の消化管システムの一部です。
消化管システムは食事から得られた栄養素(ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪、タンパク質、水分)の消化吸収と老廃物を体外に排出する役割を担っています。
消化管システムは食道、胃、小腸そして大腸からなっています。

大腸の最初の約1.8mを占めるのが結腸です。
大腸の最後の12.5cmが直腸と肛門管です。
肛門管の端が肛門です。

結腸はさらに虫垂(ちゅうすい)、盲腸(もうちょう)、上行結腸(じょうこうけっちょう)、横行結腸(おうこうけっちょう)、下行結腸(かこうけっちょう)、S状結腸(エスじょうけっちょう)、とに分かれます。
S状結腸は、大腸のS字形の部分で骨盤内にはいっています。

大腸がんは、結腸、直腸に出来たがんを言い、細かくは、結腸がん盲腸がん上行結腸がん横行結腸がん下行結腸がんS状結腸がん、そして直腸がんとに分けて言います。

大腸がんは、大腸粘膜の細胞から発生し、腺腫(せんしゅ)という良性腫瘍の一部ががん化して発生したものと正常粘膜から直接発生するものがあります。
その進行はゆっくりです。

大腸がんは、粘膜の表面から発生し、大腸の壁に次第に深く侵入していき、進行するにつれてリンパ節や肝臓や肺など別の臓器に転移します。

大腸がんが疑われる症状
下痢と便秘を繰り返すようなケース。
腸内ガスの頻発に伴う痛み、腹部膨満、腹部膨満感あるいは疼痛性痙攣。
原因不明の体重減少。
極度の疲労感。
嘔吐。
便の表面に血液が付着していたり、便の中に血の塊が混じっていたりするようなケース。
細い便しか出ていないようなケース。

□大腸がんの発がんリスク因子

病気を発症する危険を高めるものをリスク因子と呼びます。
リスク因子があるからといって、がんになるとは限りません。
また、リスク因子がないからといって、将来がんにならないわけではありません。

大腸がんの発がんリスク因子
・40歳以上の人。
・結腸がんおよび直腸がんの家族歴。
・結腸、直腸、卵巣、子宮内膜および乳房にがんの既往を持つ人。
・大腸にポリープをもつ人(小さながんではない腫瘍)。
・潰瘍性大腸炎(大腸粘膜に潰瘍ができる病気)またはクローン病の既往を持つ人。
・家族性腺腫様ポリープ症や遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC;LynchSyndrome)といった遺伝的条件を持つ人
・口内細菌(歯周病菌等)や腸内細菌叢のバランスの乱れ
(がんの知識と情報 細菌叢(ヒトマイクロバイオーム)とがん(癌)を参照)
・活性型ビタミンDの不足

□大腸がんの検査

大腸がんを発見し、診断するには、以下のような検査があげられます。

病理所見と既往歴:しこりなどの疾患の微候がないか、身体の一般的健康状態を調べます。また患者さんの生活習慣や過去の疾患、治療の病歴についても調べます。

直腸指診:直腸の検査で、医師あるいは看護師が薄い手袋を着用して指を直腸に挿入し、しこりや異常と思われるような箇所がないかを調べます。

便潜血検査:便(固形便)中に血液があるかを顕微鏡下で調べます。便検体を指定の用紙に採り、医師や研究所が検査します。

バリウム注腸検査:下部消化管の連続したX線像です。直腸へバリウム(銀白色の金属化合物)を含んだ液体を流します。バリウムは下部消化管を覆い、X線撮影を行います。この手法は下部消化管造影法とも呼ばれています。

直腸・結腸鏡検査:直腸および結腸の内部にポリープ(小さな隆起組織)、異常な箇所、がんがないかを調べます。
直腸・結腸鏡は直腸から結腸に挿入します。
直腸・結腸鏡は観察のため、ライトの付いた細い筒状の装置です。
組織片やポリープを切除したりするための器具がついていることがあり、がんの徴候に対し、顕微鏡下で観察されます。
ポリープや組織サンプルを生検に用います。

バーチャル結腸内視鏡:コンピューター断層撮影と呼ばれるX線の連続撮影法を利用して結腸の一連の画像を作成する検査法です。
コンピューターにより画像がまとめられ、結腸内部の表面のポリープや異常な領域も明らかになる詳細な像を作ります。
この検査はコロノグラフィーまたはCTコロノグラフィーとも呼ばれています。

生検:細胞や組織を採取し、顕微鏡下でがんの徴候があるかを病理学者が調べます。

がん胎児性抗原検査(CEA):血液中のCEAのレベルを測ります。CEAはがん細胞と正常細胞の両方から血流に放出されます。
正常値より高い値を発見した時は大腸癌や他の疾患の徴候である可能性かあります。

これらの検査結果で、大腸がんと診断された場合、がん細胞が大腸内にとどまっているか、あるいは体の他の部分まで拡がっているかを調べる目的で検査を行います。
がんが大腸にとどまっているか、あるいは体の他の部分まで拡がっているかを調べる過程を「病期診断」といいます。

□病期診断検査

病期診断検査で集められた情報により病期を確定し、治療計画を立てます。
次にあげる検査と手順は病期を判断するために使われます。

胸部X線検査:胸部とその内部構造のX線像です。
X線とは体内を通過してフィルム上まで達し、体内を撮影することができるエネルギービームの一種です。

CTスキャン(CATスキャン):いろいろな角度から腹部、骨盤、胸部などの体内の詳細な像を連続的に撮影します。像はX線撮影装置と連動したコンピューターにより作られます。造影剤を静脈内に注入または飲み込むと、臓器や組織がよりはっきり示されます。
この方法はまたコンピューター断層撮影法、またはコンピューター体軸断層撮影法とも呼ばれています。

MRI(磁気共鳴イメージング):磁石、電波、コンピューターを用いて体内の詳細な像を連続的に撮影します。
この方法は核磁気共鳴イメージング(NMRI)とも呼ばれています。

超音波内視鏡検査(EUS):内視鏡または堅いプローブを直腸に通して体内に挿入する方法です。
内視鏡または堅いプローブは観察のためのライトとレンズが付いています。
装置の端は体内の組織や臓器に高エネルギーの超音波を流し、エコーをつくります。
エコーは体内組織をソノグラムと呼ばれる像に変えます。
この方法は内視鏡超音波検査とも呼ばれています。

PETスキャン(陽電子放射断層撮影法):体内の悪性腫瘍細胞を見つけるための方法です。少量の放射性グルコース(糖)を静脈内に注入します。
PETスキャナーが体の周囲を回転してグルコースが体内で利用されている部分の像を撮影します。悪性腫瘍は正常細胞より活発で、グルコースをより多く吸収することから、像はより明るく示されます。

がん胎児性抗原検査(CEA):血液中のCEAのレベルを測ります。
CEAはがん細胞と正常細胞の両方から血流に放出されます。
正常値より高い値を発見した時は、大腸癌や他の疾患の徴候である可能性かあります。
※CEAは、人により腫瘍マーカーとして反応しない方もいます。
また、再発された場合の腫瘍マーカーは、一桁、二桁多い数値が出ることがあります。
がん治療の知識と情報 がん(癌)診断と病期(ステージ)診断に行われる検査の種類と内容を参照

大腸がん腫瘍マーカー
CEA 、CA19-9 、TPA

□大腸がんの転移と病期(ステージ)

がんが体内に拡がる(転移)方法は3通りあります。

・組織を透過して、がんが周囲の正常組織に侵入します。(浸潤)(播種性転移)
・リンパ系を透過して、がんがリンパ系に侵入し、リンパ管を経て体内の他の部分に移動します。(リンパ行性転移)
・血液を透過して、がんが静脈と毛細血管に侵入し、血液を経て体内の他の部分に移動します。(血行性転移)(遠隔転移)
転移については、がんの知識と情報「癌の進展と血管新生・低酸素状態とHIF-1遺伝子」「上皮間葉転換(EMT)は、癌幹細胞や癌の転移、浸潤と深くかかわっています」を参照

がん細胞が原発部位(初めの腫瘍)から離脱してリンパや血液を経て体内の他の部分に移動
すると、別の腫瘍(二次性腫瘍)を形成するかもしれません。
この過程を転移と呼んでいます。
二次性腫瘍(転移性腫瘍)は、原発部位の腫瘍と同じタイプのがんです。
例えば、もし肺がんが骨に転移するのなら、骨のがん細胞は、実際には肺がんのがん細胞です。
その病気は骨のがんではなく、転移性肺がん(肺がん骨転移)です。


0期(上皮内がん)
0期では、異常な細胞が直腸壁の粘膜(最も内側の層)にみられます。
これらの異常な細胞はがんになり、近くの正常な組織に拡がる可能性があります。
0期は上皮内がんとも呼ばれています。

Ⅰ期
Ⅰ期では、がんは大腸壁の粘膜(最も内側の層)に形成され、粘膜下層(粘膜の下の組織層)に拡がっています。がんは大腸壁の筋層に拡がっているかもしれません。

Ⅱ期
Ⅱ期の大腸がんは、ⅡA期、ⅡB期およびⅡC期に分けられます。
ⅡA期:がんは大腸壁の筋層を透過して大腸壁の漿膜(最も外側の層)に拡がっています。
ⅡB期:がんは大腸壁の漿膜(最も外側の層)を透過して拡がっていますが、隣接の臓器には拡がっていません。
ⅡC期:がんは大腸壁の漿膜(最も外側の層)を透過して隣接の臓器には拡がっています。

Ⅲ期
Ⅲ期の大腸がんは、ⅢA期、ⅢB期およびⅢC期に分けられます。
ⅢA期では、がんは大腸壁の粘膜(最も内側の層)を透過して粘膜下層(粘膜の下の組織層)に拡がっていて、筋層にも拡がっているかもしれません。
がんは少なくとも1ヶ所以上3ヶ所以下の隣接のリンパ節に拡がっているか、がん細胞がリンパ節付近の組織に形成されています。
あるいはがんは大腸壁の粘膜(最も内側の層)を透過して粘膜下層(粘膜の下の組織層)に拡がっています。
がんは少なくとも4ヶ所以上6ヶ所以下の隣接のリンパ節に拡がっています。

ⅢB期では、 がんは大腸壁の筋層を透過して大腸壁の漿膜(最も外側の層)に拡がっていますが、隣接の臓器には拡がっていません。
がんは少なくとも1ヶ所以上3ヶ所以下の隣接リンパ節に拡がっているか、がん細胞がリンパ節付近の組織に形成されています。
あるいはがんは大腸壁の筋層あるいは漿膜(最も外側の層)に拡がっています。
がんは少なくとも4ヶ所以上6ヶ所以下の隣接リンパ節に拡がっています。
あるいはがんは大腸壁の粘膜(最も内側の層)を透過して粘膜下層(粘膜の下の組織層)に拡がっており、筋層に拡がっているかもしれません。
がんは7ヶ所以上の隣接リンパ節に拡がっています。

ⅢC期では、 がんは大腸壁の漿膜(最も外側の層)を透過して拡がっていますが、隣接臓器には拡がっていません。
がんは少なくとも4つ以上6つ以下の隣接リンパ節に拡がっています。
がんは大腸壁の筋層あるいは漿膜(最も外側の層)に拡がっているか、あるいは漿膜を透過して拡がっていますが隣接臓器には拡がっていません。
がんは7ヶ所以上の隣接のリンパ節に拡がっています。
がんは大腸壁の漿膜(最も外側の層)を透過して拡がっており、隣接の臓器にまで拡がっています。

Ⅳ期
Ⅳ期の大腸がんは、ⅣA期、ⅣB期に分けられます。
ⅣA期:がんは大腸壁を透過して、隣接の臓器、リンパ節に拡がっているかもしれません。がんは肝臓、肺、卵巣のような大腸に近くない1ヶ所の臓器あるいは遠隔リンパ節に拡がっています。

ⅣB期:がんは大腸壁を透過して、隣接の臓器、リンパ節に拡がっているかもしれません。がんは肝臓、肺、卵巣のような大腸に近くない2ヶ所以上の臓器あるいは遠隔リンパ節に拡がっています。

大腸がんの再発
治療したあとにがんが再発する(再び生じてくる)ことを意味します。
再発大腸がんは大腸、あるいは、骨盤腔、肝、肺など、体の他の部分におこることがあります。

□大腸がんのステージ別予後・5年生存率

大腸がんの場合、再発の95%以上が、完全にがんを取り除く手術を受けてから5年以内に見つかります。
したがって、大腸がん治療の効果の目安の一つとして「5年生存率」を用います。

全国がん(成人病)センター協議会加盟施設の全症例5年実測生存率(%)データによる

ステージ
結腸がん
直腸がん
89.2
89.6
77.9
78.4
71.7
67.7
14.0
15.7
Total
66.5
67.6

ただし、5年生存率はあくまでも5年後に生存している人の割合です。
この中には、5年の間にがんが再発したため、化学療法や放射線療法などを続けている人も含まれます。
したがって、5年生存率は"そのがんが完治する可能性"と完全に一致するわけではありません。
見つかったときの大腸がんの進み具合や選択した治療法に加え、手術したときの年齢や元々の体力など、患者さんを取り巻くさまざまな要因によって、変化するものなのです

□大腸がん組織分類

腺癌   1.乳頭腺癌
2.管状腺癌   1.高分化型
2.中分化型

3.低分化腺癌 1.充実腺癌
2.非充実腺癌
4.粘液癌
5.印環細胞癌
扁平上皮癌
腺扁平上皮癌
内分泌細胞癌

□大腸がんの治療をはじめるにあたり

大腸がんの治療は、医師の協力の下で治療方針、治療期間、メリット・デメリットなどの説明を十分にうけ、患者さんが自分の価値観などを考慮し 最終的な治療方法を患者さんが主体となって決定する時代になりつつあります。

大腸がんの治療をはじめるにあたり「がん(癌)治療の知識と情報」に詳しくまとめましたので是非参考にしてください。

また医療の進歩とともに治療方法も多様化してきており、 医師によって治療方法が異なることは珍しくなく、主治医以外の医師の意見を聞くセカンドオピニオンを求めることが必要な時代になってきました。

詳しくは「インフォームドコンセント」と「セカンドオピニオン」をご覧下さい。

がん治療の知識と情報の「がん治療法を選択するに際してのアドバイス」を是非参照ください

□大腸がん(大腸癌)の治療

・大腸がん手術療法

ここに紹介する術式は、ごく一般的な術式で医療施設に依って、また患者さんの病状に依って術式が異なる事があります。

大腸がん内視鏡的治療
リンパ節転移の可能性がないと考えられる早期大腸がんは開腹手術をせずに内視鏡を使ってがんを切除する「内視鏡的粘膜切除術」が適応となります。
開腹しないため患者さんの負担が少なく、場合によっては数日間の入院が必要となることもありますが、外来で治療が行われることが多い治療方法です。

茎があるがんには、内視鏡の先端から伸ばした輪(スネアー)を茎にかけ、その輪に高周波電流を流して焼ききる事ができますが、切離断端よりの出血に注意が必要になります。

盛り上がりの少ない平坦ながんの場合は、粘膜下に液を注入し人工的に病変部分を浮き上がらせて切除します。

回収した組織は顕微鏡を使って病理検査し、がんがどこまで達しているかを調べます。がんが粘膜だけに限局していればそれで根治切除されたことになりますが、粘膜下にがんがあれば、リンパ節に転移していることがありますので開腹手術による腸の切除とリンパ節切除が必要になります。

大腸がん腹腔鏡手術
腹腔鏡手術は、お腹に小さな穴を開けて、そこからの操作により大腸がんを切除する方法です。小さな傷口で切除が可能ですので、術後の疼痛も少なく、美容的にも良好で、術後7~8日前後で退院できるなど負担の少ない手術です。

腹腔鏡手術は近年開発された手術手技であるため、特殊な技術・トレーニングを必要とし、外科医のだれもが安全に施行できるわけではない、つまり、どこの施設でも安全に腹腔鏡の手術が施行できるわけではないことに注意が必要となります。

したがって、腹腔鏡手術を勧められた場合には、腹腔鏡手術の専門医がいるのか、現在まで何例の治療経験があるのか、などを確認すると共に開腹手術と比較した長所、短所の説明を十分に受けて、腹腔鏡手術か開腹手術かを決定しなくてはなりません。

現時点で、腹腔鏡手術は、手術に比べてリンパ節転移や腹膜転移の確認に劣るため、リンパ節転移や腹膜への転移が疑われるような、大きく、深達度の深い大腸がん(大腸癌)に対しては適応とならない事が一般的ですが、一部施設では開腹手術と同等の安全性や治療成績が得られるのかについて臨床比較試験が実施されています。

大腸がん手術(外科)療法
大腸がん(大腸癌)の手術には、根治を目指す治癒切除術(ちゆせつじょじゅつ)と対処療法的な非治癒切除術(ひちゆせつじょじゅつ)、姑息手術(こそくしゅじゅつ)があります。
がん(癌)治療知識と情報「がん手術療法・外科療法」を参照

大腸がん治癒切除術
治癒切除は手術前に肝臓や肺への遠隔転移および大腸の壁を越えて他臓器に浸潤していないと判断された場合に選択される術式で、腫瘍部分と周囲のリンパ節の切除を行います。
結腸部分(上行結腸からS状結腸まで)の手術では、切除部分をつなぎ合わせて手術を終えることができますし、ほとんどの場合機能障害が残る事がありません。

直腸は肛門に近く、骨盤内の深く狭いところにあり、直腸の周囲には男性では前立腺や精嚢、膀胱が、女性では膀胱との間に膣や子宮があります。骨盤内にある自律神経という細い神経繊維によって排便、排尿、性機能など日常生活の上で極めて重要な機能が調節されています。

したがって、直腸がんの治癒切除では、がんの進行度に応じてできる限り自律神経を温存する自律神経温存術により術前と同様の機能を温存することを目指していきます。

しかしながら、肛門により近い直腸の手術の場合には、がんの切除の際に人工肛門を造設することが必要となる事もあります。

大腸がん非治癒切除術
手術前に肝臓や肺などに転移を認める場合には、治癒切除の適応とはなりません。
非治癒切除には、術後に化学療法(抗がん剤)を行う間に大腸にできた腫瘍が大きくなり、腸閉塞となることを避けることを目的として原発巣(大腸がん)の切除を行ったり、転移巣の切除も可能であれば同時に切除をする手術などが非治癒切除にあたります。

多くの場合、術後に補助化学療法(抗がん剤)を行うことで、残存部分に対して治療を行っていきます。

大腸がん姑息手術
非治癒切除の適応がないと判断される、高度な転移がある場合には、便排泄を確保するなどの目的のために姑息手術が行われる事があります。

姑息手術では原発巣および転移巣ともに腫瘍は残存していますから、患者さんの容態を考慮し、化学療法を行うメリットの方がデメリットよりも勝ると判断された場合には、積極的な治療を行っていくことになります。

大腸がん腹膜播種(癌性腹膜炎)の切除術
限局性播種で、他に切除不能な遠隔転移が無く大侵襲とならない切除であれば、原発巣切除と同時に腹膜播種巣を切除することが望ましい。

腹膜播種巣切除の有効性を証明する大規模臨床試験はないが、予後の改善や長期生存例が報告されています。
過大な侵襲を伴わずに切除可能な限局性播種は切除することが望ましい。

海外からは,広範な播種に対する全腹膜切除(total peritonectomy)238)の有効性が報告されている。
腹腔内温熱化学療法との併用が標準的とされるが、実際に本療法を実施しているのは海外でも限られた医療機関のみです。

本療法を施行した 506 例の MST は19.2 カ月で, 5 年以上の長期生存もあること、 5-FU+LV全身化学療法を対照群とした RCT で本療法群の MST が有意に長いことなどの報告があります。

しかしながら、日本においてはほとんど治療実績を有しない療法であり、一般の医療機関で実施できるものではありません。
適正に計画された臨床試験として本療法の有効性と安全性を確認していく必要があります。

大腸がん 切除不能な遠隔転移例における原発巣切除術
原発巣切除の適否は、原発巣による症状、遠隔転移の状態、全身状態等、個々の状況に応じて決定すべきです。
他の療法では制御困難な原発巣による症状があり、耐術能に問題がなく、過大侵襲とならない切除であれば、原発巣切除が望ましい場合が多い。

切除不能な遠隔転移を有する大腸癌の原発巣切除の適応は、十分に検討すべき課題です。
閉塞や出血など、保存的療法では制御困難な症状を緩和する目的で行われる原発巣切除あるいは人工肛門造設などによる腸管空置術については異論が少ないですが、無症状ないし症状が軽微な症例に対する適応にはさまざまな考えがあります。

無症状例に対して、予測される症状の出現に先んじて原発巣切除を行うことの有用性が問題となります。
限られた生命予後のなかで原発巣の症状緩和がどれほど QOL の改善に寄与するかを予測することは容易ではありません。

しかも、この病態は、高度の進行坦癌状態であり、手術の併症や手術死亡のリスクが高いことも負の要因です。

近年、全身化学療法によって切除不能な転移巣が切除可能となる症例は少なくなくなり、症状緩和とは別に、根治も視野に入れた原発巣切除の意義も見直されるようになってきています。

しかし、現状では実際に根治が得られることは例外的であり、身体機能や免疫能の低下をもたらす手術を回避し、有効な全身化学療法を速やかに開始することが原発巣のコントロールにも有効であるという考えもあります。

以上より、原発巣切除の適応は、原発巣の症状、転移の状態、全身状態のほか、生命予後、手術のリスク、切除による症状緩和の効果予測を症例ごとに評価して決定すべきです。

大腸がん 肝臓や肺転移を有する症例に対する切除術

肝や肺転移を有する症例に対する切除の有効性が示されており、切除可能な肝や肺転移に対しては切除を考慮すべきです。
しかし,手術適応基準を決するに足るデータはありません。
治癒率は高くないこと、切除の予後予測因子(predictive factor)は不明ですので十分なインフォームドコンセントを得る必要があります。

肝と肺転移をともに有する症例でも切除により長期生存あるいは治癒が得られることがあります。
しかしながら肝・肺転移をともに有する症例では原発巣や転移巣の進展が高度であることや、肝・肺以外にも転移を認めることが多いので、完全に切除される症例は極めて少ない。

・大腸がんの放射線療法

放射線療法は高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療方法です。日本では大腸がん(大腸癌)の場合、放射線療法はあまり行われていません。
切除範囲の狭い欧米では直腸がん手術の前後に放射線療法が行われています。
また、骨転移や骨盤内再発の痛みに対しては、症状を緩和する目的で放射線療法がしばしば行われます。

がんが大きい場合に手術前に放射線療法を行い、がんを小さくしてから手術を行う場合もあります。これを術前照射といいます。

放射線治療の問題点としては大腸がん(大腸癌)は分化度の比較的高い腺癌であり放射線感受性が低いこと、さらに小腸など放射線感受性の高い臓器に囲まれていることにより十分な線量を腫瘍に照射できないことが挙げられます。

正常な細胞に放射線が照射されると正常な細胞がダメージを受け副作用が出ることがあります。
副作用には治療中又は治療直後にでるものと、半年~数年後にでてくるものとがあります。

放射線の照射線量は40~50Gy(グレイ)程度になります。放射線療法の副作用としては、腸管の癒着(通過障害)、粘膜組織障害による下痢や腹痛、出血などの合併症の可能性が考えられます。
がん(癌)治療知識と情報「がん放射線療法」参照

・大腸がんの化学療法(抗がん剤・分子標的薬)

大腸がんの遠隔転移などのために外科療法で切除しきれない場合や、手術後にがんが再発した場合には化学療法(抗がん剤)による治療を行います。リンパ節転移や遠隔転移があった場合、手術時にがんを残さずきれいに取ったとしても再発の心配があるため再発予防で抗がん剤治療が行われることもあります。

術後の再発を予防する目的で行われる抗がん剤治療を補助化学療法と呼びます。
大腸がんの補助化学療法の効果を確かめる研究は過去に多数行われてきましたが、現時点では十分な効果が確認された研究はありません。
ただ欧米では、リンパ節転移陽性の病期分類ステージIIIの症例に対して、術後補助化学療法は標準的になっております。
治療法としては5-FU+LV(ロイコボリン)を組み合わせた点滴治療が中心となっています。

また大腸がん(大腸癌)が遠隔転移や再発した場合には「一時的に腫瘍を縮小させる」や「がんの進行を遅らせる」 ことを目的として抗がん剤が使用されます。
予防的投与よりより多量になるため、副作用も強くなるため十分な注意が必要となります。
大腸がん(大腸癌)は肝臓に転移しやすいのですが、その場合副作用を軽くするために肝動脈にカテーテルと呼ばれる細い管を通して抗がん剤を注入する、肝動脈動注化学療法が行われることもあります。

術後補助化学療法と年齢
70 歳以上の高齢者でも、全身状態が良好で主要臓器機能が保たれていて、化学療法に対してリスクとなるような合併症がなければ、術後補助化学療法を行うことが可能です。
70 歳以上の患者においても、60 歳以下の患者と同等の再発抑制効果と生存期間延長が示されています。
しかし、多くの高齢者では種々の合併症をもつことが多いため、適応の判断には主要臓器機能や全身状態を加味して慎重に判断する必要があります。

ステージⅡ大腸癌に対する術後補助化学療法
ステージⅡに対する術後補助化学療法の有用性は確立していません。
結腸癌と直腸癌(ステージⅡは 91%)を対象に術後の補助化学療法群と、手術単独群を比較した試験では、化学療法群の再発率および生存率が良好で、5 年生存率で 3~4%の上乗せ効果がみられましたが、ステージⅡのみでは有意差は得られないとの報告があります。

術後補助化学療法の治療期間
術後補助化学療法の治療期間については確定的な結論は得られていませんが、現在のところ5-FU ベースの補助化学療法は、6 カ月投与が標準的です。

大腸がん 肝臓転移根治切除後の補助化学療法
大腸癌肝臓転移根治切除後の補助化学療法としての肝動注療法と全身化学療法の有効性と安全性が臨床試験で検討されてきましたが、肝動注療法による生存期間の延長と残肝再発防止への明確な治療効果は認められていません。
また、全身化学療法による生存期間の延長を証明した報告もありません。

大腸がん 切除可能肝臓転移に対する術前化学療法
切除可能肝転移に対する術前化学療法の安全性は確立されていません。
術前化学療法の主たる目的は、腫瘍縮小に伴う肝切除量の減少、微小転移巣の早期治療、化学療法の奏効性判定ですが、非奏効例で切除不能となるリスク、抗がん剤による肝障害や周術期合併症などの問題があので、十分なインフォームドコンセントを得る必要があります。

大腸がん 切除不能肝臓転移に対する化学療法
切除不能と判断される肝単独転移例に対する化学療法の有効性と安全性に関しては,いまだ十分なエビデンスはありません。

全身化学療法後に根治切除が可能になる症例が報告されるようになってきましたが、化学療法が奏効して切除可能となった症例の予後は、当初から切除可能な肝転移例と同程度であるとする報告が多い。
このような肝転移に対しては切除を考慮すべきです。

ただし、全身化学療法後に切除を行っても当初から切除可能な肝転移例ほどの予後は期待できないとの報告があります。
切除不能肝転移に対する肝動注療法は、肝転移巣に対する奏効率は高いが、生存期間への効果は明らかではありません。


□強力な化学療法に対する副作用対策

強力な化学療法を行えば当然副作用も強く、白血球の減少による感染症、血小板の減少による出血などがおこりやすくなります。
白血球や赤血球、血小板などが低下することを骨髄毒性(骨髄抑制)といいます。

骨髄抑制により身の回りを清潔に保ちウイルスや細菌などの感染を予防する必要があります。また免疫の低下により帯状疱疹もできやすく、しかも悪化しやすくなります。

治療中は規則正しい生活を送り、免疫力を維持すること、および骨髄抑制からできるだけ早く回復するよう心がけが必要となります。

□癌(がん)の何が生命を脅かすのか

癌(がん)関連遺伝子(癌遺伝子と癌抑制遺伝子)という遺伝子群の遺伝子の変異(2個~10個)が遺伝子産物(変異タンパク質)を産生します。

遺伝子産物(変異タンパク質)は生体の生命維持に重大な支障を与え、多臓器不全や身体の衰弱を招きます。
遺伝子産物(変異タンパク質)こそ癌(がん)が生命を脅かす元なのです。

□がん細胞が産生する遺伝子産物(変異タンパク質)の生体に対する影響

がん化した細胞の種類や発生した部位により産生される物質も異なり、がんの病態や悪性度が規定されます。

また、同じ腫瘍内にあるがん細胞でも、クローン増殖(転写)するがん細胞の増殖スピードが早く、悪性度が高い、そして同じ腫瘍内に多くのクローンが混在していると考えられます。
抗癌剤等の薬剤治療により、クローンが死滅しても別のクローンが特別な物質(薬剤耐久性遺伝子産物(薬剤治療が効かなくなる))を産生し、薬剤や免疫(免疫回避機構)に依る治療等からすり抜ける術を獲得します。

がん細胞が産生する遺伝子産物(変異タンパク質)は細胞内に産生される物質と細胞外へ産生される物質があり、細胞内にはシグナル伝達関連タンパク質、細胞外には増殖因子、癌胎児性タンパク質(CEA、AFP)、酵素、ホルモン、サイトカイン等です。

この様な事に依り、がん細胞が無知秩序で抑制不能な細胞増殖や転移、がん細胞のアポトーシス抑制(がん細胞の不死化)やがん周囲の血管新生等の能力を獲得します。

生体に対しては、全身の代謝異常、消化器機能障害、播種性血管内凝固症候群(DIC)、炎症誘導、発熱、悪液質(食欲低下、体重減少)、高カルシウム血症等、腫瘍随伴症候群と呼ばれる癌(がん)が産生した物質が血流に入って体内を循環する事で起こる症候群、特に病期(ステージ)の進んだ末期癌に多く見られます。

□癌(がん)を克服するには次の様なことが行われなければなりません


「抗炎症」「変異物質の抑制」「免疫細胞の活性」「癌細胞の死滅」「血液の改善」「クローン阻止」「活性酸素の消去」「代謝異常の改善」等を総合的に行わなければ癌(がん)克服の道筋は見えないのです。

漢方医学療法は、これら問題に対し学術的に裏付けられる療法なのです。
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